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2年半ぶり2度目のブレイク 奈良に「泊まれ」の鹿ポスター 実は“前向きな思い”の結集
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横断歩道を渡る3頭のシカ、そして道路には「止まれ」ならぬ「泊まれ」の文字。ネット上では先日、1枚のポスターが大きな話題を呼びました。シカ、歴史の教科書に登場するレベルの有名な神社仏閣、豊かな自然が揃う古都・奈良から発信されたメッセージです。しかし実は、5年前に作られたもののリバイバル人気だったそう。また、制作の意図も極めてポジティブで、都道府県アピール時にある“自虐”とは一線を画していました。話題のポスターについて、奈良市観光協会 広報企画課の若き係長が熱く語ります!
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「奈良のシカは横断歩道を渡る」という“奈良あるある”もポイント
「伝えたいことがストレートすぎて好き」というメッセージとともに、ツイッターに投稿された奈良市観光協会のポスター。「奈良に泊まれ!」と強く訴えるデザインには、偶然見かけた一般の方が3日に投稿してから1週間で18万件を超える“いいね”が集まりました。
コロナ禍で世界的に観光客が減少している今、その打破を願うコンセプトにも見えます。実際に奈良でも、コロナ禍前に右肩上がりだった外国人観光客数は大きく低迷しました。
しかしこのポスター、実のところSNS上で“バズった”のは今回が2度目。奈良市観光協会で広報企画課の係長を務める胎中謙吾さんによると、最初に作られたのは何とコロナ禍前の5年前でした。宿泊者数が少ない状況は、かねての懸案事項だったそうです。
「最初の制作は平成28年度で、500枚を印刷しました。その当時は大きな話題にならず、ネットで注目を集めたのは2年後の平成30年。そこで多くのメディアや観光業界からお問い合わせを受け、追加で作成しています。一般の方からも欲しいという連絡をいただいていたのですが、残念ながら完全に告知用途なんです」
そして令和3年の今年、予期せぬ2度目のブレイク。取材の前日、東京でこのポスターを掲げてプロモーションを行った際は、「例のポスターですね」と話しかけてくれる人も多かったそうです。
「今回のブレイクはメディアからのお問い合わせを受けて気付きました。正直言って、驚きましたね。5年前のポスターが2年後、そしてさらにその約2年半後と間を空けて2回も“バズる”とは、ネットの流行って本当に読めないものだなと思います」
そもそもの立案者は胎中さんの先輩にあたる40代の職員。今回“バズった”ツイートへのレス(返信)でも寄せられていた通り、英ロックグループ「ザ・ビートルズ」のアルバム「アビイ・ロード」のジャケットは制作当初から意識していたそうです。そこに、「奈良のシカは横断歩道を渡る」という、他の都道府県民から見た“驚きポイント”をプラスしました。
「私のように生まれも育ちも奈良の場合、シカについては当たり前に感じてしまうことが多いんです。学校が奈良公園の近くだったので、校庭にいることも日常茶飯事。逆に犬が入ってきた時の方が『犬だぞ!』と驚くくらい(笑)。横断歩道を渡ることも、住民にとっては『そういうもの』となりますが、知らなかった方が多いんだなと」