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夏風邪などの流行で小児薬が不足 対応に追われる薬剤師 見通し立たず大人用の錠剤にも影響

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

限定出荷となったホクナリンテープ【写真:Hint-Pot編集部】
限定出荷となったホクナリンテープ【写真:Hint-Pot編集部】

 夏風邪であるヘルパンギーナの流行などで、発熱や咳の症状を訴える子どもが増えています。同時に、薬局を悩ませているのが治療薬の不足です。薬によっては出荷調整が行われており、インターネット上では今後の安定的な供給を心配する親の声もみられます。薬剤師のはるこ(@haru_itowokashi)さんに薬局の現状を聞きました。

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「ドライシロップもみんなやられてしまいました…」

「ママたちへ みんな月1回はお世話になっているであろうアスベリンやカルボシステイン、カロナールは実はとっくに虫の息だったのですが、ついにホクナリンテープもツロブテロールテープ各社も、同ドライシロップもみんなやられてしまいました……」

 6月下旬、はるこさんが子ども向け処方薬の現状をツイッター上に投稿すると、「え!!! アスベリン、ホクナリンテープ、ツロブテロールは毎度お世話になってるのに……!」「息子は重度の喘息で、ホクナリンは毎日必ずなのですが……」「息子は1週間熱が下がらず抗生剤を処方されたのですが、薬局で入荷制限がかかっていて在庫がないと言われました」など、幼い子を持つ親から心配の声が寄せられました。

 ヴィアトリス製薬は6月、医療関係者向けに気管支拡張剤のホクナリンテープ、ドライシロップなどの限定出荷を発表。「予想を大きく上回る感染症の流行と他社製品の供給制限の影響」「いまだ需要の収まりの見通しがつかず、将来の在庫消失による出荷停止を回避するため」と説明しています。

 今、子どもたちの間では各地で夏風邪のヘルパンギーナが猛威を振るい、RSウイルスなどの感染症も流行。その影響が薬の供給へと拡大している状況です。はるこさんは「子どもの薬に関しては、約1年前のカロナールの出荷調整に始まり、アスベリン、カルボシステインも続きました。小児用が特別というわけではなく、大人用の錠剤も同時に出荷調整になっています」と、補足しました。

 薬が足りなくなれば、困るのは患者です。いずれも子どもの風邪などの症状改善に欠かせない薬ばかり。薬局では、薬剤師が調整に追われています。

「たとえば、カロナールは解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン製剤のひとつですが、ほかのメーカーのアセトアミノフェン製剤を注文して対応しています。ほかの製品も同様です。ただ、ひとつ出荷調整がかかるとほかのメーカー製品に注文が流れ、そちらも出荷調整となりどんどん玉突きが起こって、最終的に同成分のものがどれも出荷調整になってしまいます」と、ジェネリック薬も含めて逼迫した状況にあるといいます。

 薬を調達するため、医師やほかの薬局と緊密に連携しています。

「同成分の在庫がなくなってしまった場合は、在庫のある同効薬への変更を医師にお願いすることもあります。近隣の薬局やグループ薬局の場合は、グループ間で融通し合って乗り越えています。また、もうどうしようもなくなると、医薬品卸やメーカーの担当さんに泣き付いてお願いしています。どうにもならない薬もあるのですが、みなさんどうにかしようと奮闘してくださっています」

 今後はどうなるのでしょうか。懸念されるのは冬の到来です。はるこさんは、風邪症状の薬の不足は新型コロナウイルスによる需要の急増など別の要因もあると前置きし、「この状況はまだまだ続くでしょう。すでに昨年の冬は薬の規格を変更したり、ジェネリック希望でも金額の高い先発品でご用意したり、医師に了解を得たうえで在庫がある医薬品のなかから同じような効き目のものに変更してお渡ししてきました。この冬も同様に対応していくつもりです」との見通しを示しました。

 そして、「咋シーズンはインフルエンザの薬もギリギリでした。さらに、現在は感染治療に重要な抗生剤も入荷しなくなってきているので、引き続き手洗い・うがいやワクチンなどで自衛し、熱など感染症状のある方は出勤せず自宅療養し、周りに感染を広げないことも重要だと思います」と呼びかけています。

(Hint-Pot編集部)