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子どもはどうすればいいのか…学童保育に“夏休みの壁” 申し込み相次ぎ落選 専門家が指摘する課題
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子どもの夏休みが迫り、放課後児童クラブ(学童保育)の不足が改めてクローズアップされています。共働き世帯が増加するなか、夏休みに子どもを預けようと短期の学童に申し込んだものの、希望者が多く抽選になり、落選してしまうケースも。預け先がなければ、子どもを自宅にひとりで留守番させなければならず、状況は切迫しています。夏休みの学童が抱える問題について、当事者の親と専門家にお話を伺いました。(取材・文=Creative2クロスメディアチーム・水沼一夫)
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増える夏休みの学童需要 募集はあるものの…
愛知県に住むある男性は、小学4年生と1年生、2人の子どもを育てています。正社員として働き、配偶者もパートタイマーとして週2~3回、終日勤務しています。
夏休みに備えて、6月中旬に公立の学童に申し込んだものの、抽選の結果、上の子どもが落選。男性は大きなショックを受けました。「正直な意見としては、納得いかないですね。抽選というのがおかしいと思います。共働き家庭の学童には対応できるよう、政治でなんとかしてほしい」と、切実な声を上げます。
学童から、詳しい理由や倍率などは知らされていないそう。男性の職場はテレワークを推奨しておらず、配偶者も自宅外での勤務です。夏休みは刻一刻と迫っており、「4年生の息子はひとりで留守番させるつもりです。最悪、他県住まいのどちらかの両親の実家に頼るしかありません」と、途方に暮れています。
学童といえば、小学校入学時の「小1の壁」が知られています。下校時間が早い小学生。学童に預けることができなければ、親は退職せざるを得なくなり、とくに女性の社会復帰やフルタイムの仕事継続を妨げる要因のひとつとなっています。
一方で、普段は学校があるため学童を必要としていない家庭からは、夏休みだけ学童を利用したいという需要も。そのため夏休み期間に学童を募集する自治体もあるそうで、「長期休み前には毎回募集がかかります」と男性は話します。また、募集人数については「場所も限られるので大規模ということはないと思います」とする一方で、「若干名ということはありません」と、それなりの受け入れ体制が整えられていることを明かしました。
ちなみに4月時点では、2人とも学童に入れることができたそう。入学したばかりの下の子どもが早上がりだったため、仕事への影響を考慮して申し込みをしていました。
夏休みに子どもを学童に入れられない厳しい現状も
募集があるにもかかわらず、夏休みに子どもを学童に預けようと思っても預けられない事例は、珍しいことではありません。
「十分あり得ると思います。夏休み期間のニーズについて、学童保育全体としてまったく対応しきれていないのが実情」と話すのは、一般社団法人あい和学童クラブ運営法人の萩原和也代表です。
「学童の待機児童の数が先日、小倉(將信)こども政策担当大臣から速報値でありましたけど、およそ1万7000人いるわけですね。夏休みに空きができて入れるかといえば、普通に考えると、空きはそうそうないわけです。夏休みだけの短期の利用をしたい方が入所を申し込んでも、なかなか入れないというのは避けようがない事態だと思います」
萩原さんは10年ほど学童の仕事に携わり、かつては46の学童クラブを運営するNPO法人の代表も務めていました。
「何千人もの保護者さんと相対していますが、夏休みにお子さんを家で留守番させるのは不安なので学童に入れたいと思うわけですね。それは市町村、事業者もおおいに承知していて、たとえば夏休みなら、夏休み期間中に新たな学童保育所を増やして対応するという制度があります。ただ、なかなか活用できていないのが現状です」
その理由は、補助金制度の使いにくさにあると指摘します。
「たとえば7~8月だけ開く学童保育が補助金をもらおうとした場合、通年開催と同じレベルの施設と人員を用意しなければいけないのです。施設においては、子ども1人につき1.65平方メートルという基準なのですが、それぐらいの広さを持ったプレイルームや、子どもが具合の悪いときに休む静養室のスペースを確保しなければいけません。もうひとつ重要なのが職員の配置です。『放課後児童支援員』という資格を持った人を配置しないと、補助金の対象が一番低いランクになってしまいます」