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梅干しをのせたお弁当のごはん 殺菌効果は触れている部分だけ 塩分濃度によってはカビにも注意を

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

お弁当のごはんに梅干し(写真はイメージ)【写真:写真AC】
お弁当のごはんに梅干し(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 昔から、お弁当のごはんに梅干しをのせると食品が傷みにくいといわれています。しかし、さまざまな梅干しが販売されている現在、実際のところはどうなのでしょうか? 保存食だからと常温保存をしていると、表面にカビが生えることもあるようです。保存時の注意点などを、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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1日1粒で医者いらず 抗菌や殺菌、防腐作用が

 日本では、平安時代の貴族たちに梅の実が薬として用いられ、戦国時代には武士の兵糧食として使われました。江戸時代になると梅干しが庶民に広がり、シソ漬けや砂糖漬け、甘露煮など保存食として作られるようになり、今もその食文化が受け継がれています。

「1日1粒で医者いらず」との言葉があるように、梅干しの効能は古くから知られ、重宝されてきました。確かに梅干しの作用は素晴らしいもので、カリウムには体内の余分な塩分や水分の排出を促す働きがあり、豊富に含まれるクエン酸などの有機酸には疲労回復効果、ミネラルの吸収促進効果のほか、殺菌効果があるといわれています。お弁当のごはんの上に梅干しをのせる“日の丸”の習慣が古くからあるのは、このためでしょう。

 しかし、昔ながらの梅干しとは異なり、塩分や酸味を控えた梅干しをひと粒ごはんにのせたからといって、そのほかのおかずが傷みににくくなるかというと、そのようなことはありません。梅干しと接している部分には殺菌効果があるかもしれませんが、全体での効果は期待できないでしょう。梅干し自体が傷みにくい保存食ではありますが、梅干しが含む塩分濃度によっては常温保存でカビが生えることもあるので注意が必要です。

昔ながらの梅干しと現代の梅干しでは異なる?

梅干し(写真はイメージ)【写真:写真AC】
梅干し(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 現代の梅干しはとても食べやすくなりましたが、殺菌・防腐効果があり傷みにくい保存食といわれる梅干しは、塩味が強く酸味のある昔ながらのものを指します。

 梅干しは、梅の実を塩漬けにしたあと、シソの葉と一緒に梅酢に漬けて天日干ししたものです。昔ながらの梅干しは塩分濃度が約20%と高く、長期間常温で保存できるほか、強い酸味もあってクエン酸などの有機酸がたっぷり含まれています。

 一方、現代の梅干しには、健康志向の高まりから水や湯で塩抜きされ、カツオや昆布などの調味液に漬けて酸味を抑える「調味梅干し」と呼ばれるものもあります。塩分や酸味が控えめで食べやすく、おいしいのですが、抗菌や殺菌、防腐の側面からいうと大きく期待しないほうが良いでしょう。常温ではカビが生えることもあります。冷蔵庫に保存し、早めに食べましょう。

 昔ながらの梅干しを小さく切ったり、漬け込んだ赤シソなども一緒に刻んだりしてごはんに混ぜ込むと良いでしょう。酢飯のようにさっぱりと食べられて、お弁当にもおすすめです。梅干しの酸味は唾液や胃酸の分泌を促し、胃腸の働きを良くします。暑い季節に、上手に活用したい食材です。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾