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スイカを食べすぎると良くない理由 「天ぷらとの食べ合わせが悪い」は本当か 栄養士に聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

夏といえばスイカ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
夏といえばスイカ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 すっきりとした甘みとシャリシャリとした食感がおいしいスイカは、夏を代表する果物です。みずみずしいので水分以外の栄養はほぼなく、カロリーも糖質も低いイメージがありますが、実際のところどうなのでしょうか? 栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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水分が全体の約90%も、低カロリーの果物ではない?

 スイカは全体の約90%が水分です。原産地は南アフリカの砂漠地帯とされ、一説によると2500万年前には存在していたといわれています。その後、地中海から欧州各地に広まり、古くから水分補給のための貴重な食べ物だったようです。

 日本にいつスイカが伝わったか、その経緯には諸説あり、はっきりしていません。平安時代には伝来していた説もありますが、栽培が始まったのは江戸時代後期とされています。その後、さまざまな品種が外国から導入され、現在の日本のスイカになりました。

 日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、スイカは可食部100グラムで41キロカロリーです。ただし、ほかの主な果物と比べてみると、イチゴは31キロカロリー、ミカンは49キロカロリー、リンゴは53キロカロリー、バナナは93キロカロリー。イチゴがもっとも少なく、ミカンと同じくらいです。しかし、これらの値はあくまでも標準の数値。果物の糖度によりエネルギーも変動するため、スイカが極端に低カロリーの果物とは言い切れません。

スイカの主な注目成分 食べすぎ注意の理由とは

 スイカに限らず、野菜や果実は水分が多く、栄養価が低いと考えられがちですが、それぞれの食品に注目成分があります。スイカの主成分は果糖やブドウ糖である炭水化物ですが、ほかにカリウムも豊富です。赤肉種にはβカロテン、リコピンが含まれています。

 カリウムは体内の余分な塩分の排出を助けるので、湿度が高い今の季節、むくみが気になる際にもおすすめと言えるでしょう。βカロテンは体内で必要時にビタミンAに変わり、免疫機能を高める効果も。リコピンはカロテノイド色素の一種で、抗酸化作用があり疲労回復にも役立ちます。

 おいしく水分補給ができ、注目成分が含まれているからといって、スイカの食べすぎはおすすめしません。多く食べてしまうと水分のとりすぎとなり、体を冷やしてしまいます。また、消化不良を起こし腹痛につながる可能性も。昔から「スイカは天ぷらと食べ合わせが悪い」といわれるのは、冷えすぎた胃腸にとって、消化に時間のかかる油は負担がかかりやすくなるからでしょう。

 ただし、この天ぷらとの組み合わせは、スイカを大量に食べなければとくに気にすることはありません。むしろ、冷たいビールとスイカの組み合わせのほうに注意が必要です。どちらも利尿作用があるので、体内のアルコール濃度が高まるリスクもあります。気をつけましょう。

おいしく食べるには冷やしすぎないこと 皮も食べられる

スイカの皮の浅漬け(写真はイメージ)【写真:写真AC】
スイカの皮の浅漬け(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 スイカは冷やしすぎると甘さが落ち、せっかくのおいしさを味わえません。丸ごとなら保存は常温で、直射日光を避けて風通しが良く涼しい場所に置きましょう。冷蔵庫に入れるのは、食べる2~3時間前がおすすめです。もっとおいしく食べたい場合は、大きなボウル(バケツ)にスイカを丸ごと入れて布巾をかぶせ、上から水をかけて冷やすと良いでしょう。

 カットスイカは傷みやすいので、冷蔵保存します。乾燥にも弱いため、可能であればそれぞれラップに包んでから野菜室に入れたほうが、おいしさをキープできるでしょう。

 また、皮も食べられます。皮と果肉の間に包丁を入れて、赤いスイカの果肉部分を少し残してカット。外側の硬い緑の部分を、同じように包丁を入れて取り除いたあと、拍子木切りなど適度な大きさにカットしましょう。好みのドレッシングをかけて食べても良いですし、塩昆布とあえてゴマ油をかけても美味。シャキシャキとした食感が楽しめます。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾