食
ニンニクがスタミナ食といわれる理由 適量や効率的な食べ方とは
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実
疲労回復や夏バテ解消に、ニンニク料理を食べてスタミナをつけるという人も多いでしょう。厳しい暑さで食欲不振に陥りがちなこれからの時期、積極的に取り入れたいところです。夏を乗り切るために、ニンニクの栄養パワーや効果的な食べ方、適量を栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
◇ ◇ ◇
ニンニクの刺激臭のもとは重要な成分
ニンニクの原産地は現在も不明で、中央アジア説と西シベリア説の2つの説があります。日本には中国から伝わったと考えられており、古くから薬用として利用されてきました。香辛野菜として食べられるようになったのは1900年代半ばで、最近のことです。
生のニンニクには独特の刺激臭があります。この刺激臭のもとがアリシンです。アリシンは、アミノ酸の一種アリインという成分が、すりおろしたり、刻んだりした際の刺激により酵素の作用を受けて変化したもの。
アリシンには、さまざまな細菌に対して抗菌・殺菌作用があり、食中毒予防効果が期待されます。刺身にすりおろしたニンニクが薬味として添えられているのはそのためです。さらに代謝を促し、疲労回復に欠かせないビタミンB1の吸収をサポート。血流を促進し「血液サラサラ」効果があることでも知られています。
このほか、血糖値の上昇をゆるやかにしたり、善玉コレステロールを増やし悪玉コレステロールを減らしたりする効果も。抗酸化作用が強く、がんなどの生活習慣病のリスクを減らす可能性も注目されている成分です。以上のことから、ニンニクを食べると「スタミナがつく」「元気が出る」といわれるのでしょう。
健康成分のアリシンは油との相性が良い
アリシンは熱に弱い成分ですが、油との相性は良く、油とともに調理することにより分解されにくくなります。たとえば、オリーブオイルとニンニクで食材を煮込んだスペイン料理のアヒージョ、オリーブオイルにニンニクと唐辛子を加えたイタリア料理のペペロンチーノなどがあります。これらのシンプルな料理は日本でも人気ですが、アリシンを油と効率的に摂取する点でも理に適っていると言えるでしょう。
暑さでバテやすい夏。ニンニクの栄養メリットをいかす料理を手軽に作りたいならば、豚肉とニンニクの炒め物はいかがでしょうか。豚肉のビタミンB1の吸収をニンニクのアリシンがサポートするので、疲労回復を促します。ニンニクは、みじん切りでも、薄くスライスしても、すりおろしても良いでしょう。味付けはしょうゆベースでもみそでも、市販の焼き肉のタレを使ってもかまいません。冷蔵庫にあれば、タマネギやニンジン、ピーマンなどの野菜も組み合わせると、料理の見た目も栄養価もさらに良くなります。
ただし、大切な用事がある場合、ニンニクは16時間以内に食べないほうが良いでしょう。食べてから16時間は臭いが出ているとの研究結果を、ライオン株式会社が発表しています。
また、ニンニクの食べすぎは逆効果です。アリシンは刺激が強い成分でもあるので、大量に食べると胃腸の粘膜を傷付け、胃痛や腹痛などを起こすことが。殺菌作用も強いので、腸内にいる善玉菌にも影響を及ぼし、腸内環境を悪化させて下痢や便秘などの症状を引き起こすこともあります。
適量は個人差がありますが、1日1~2片(5~10グラム)程度を目安にしましょう。とくに生で食べる場合は、刺激が強いので気をつける必要があります。空腹でいきなりニンニクを食べるのも避けたほうが良いでしょう。ほど良い量を、ほど良いタイミングでおいしく食べて、暑さを乗り切りたいところです。
【参考】
「にんにくの口臭はどれくらい時間をおくべき? 『にんにく臭』の調査と対処法」(Lidea 2019年10月18日更新)
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾