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ポスターで選挙制度を解説したら政治活動? 騒動から1年 当事者の元高校生が語る告発の真意
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昨年6月、学校内に参議院選挙の仕組みを解説するポスターを掲示したところ、教員から政治的活動にあたると見なされ、はがすよう指導されたという高校生のツイッター投稿が大きな話題になりました。騒動はメディアでも報じられ、さまざまな議論に。あれから1年余り。当事者の高校生は今、何を思っているのでしょうか。この春に宮城県内有数の進学校である宮城県仙台第二高等学校を卒業、現在は慶應義塾大学に通う白坂里彩(白坂リサ/Risa Shirasaka@organ3174)さんに、一連の騒動を振り返ってもらいました。(取材・文=Creative2クロスメディアチーム・佐藤佑輔)
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参議院選挙の仕組みを、授業で扱われている内容そのままに解説
「高校で、参議院選挙の仕組み等を描いたポスターを掲示したら、先生に『学校での政治的活動は禁止されてる、はがせ』と言われた。若者に選挙へ行けと言う前に、こんなにも政治に対し敏感な学校の空気を変えたほうが良いのでは? 同級生には有権者もいる。こんな高校が県一の進学校という現実」
昨年6月の白坂さんの投稿は、1.8万件のリツイート、4.9万件の“いいね”を集めるなど大きな話題に。続く投稿では「このポスター掲示、この教員に限ったことではない。学校は特定の政党を応援するわけでもない政治啓発活動に関して神経質になりすぎていると思う。議論がもっとオープンにされても良いと思う」と自身の考えを綴っています。
白坂さんが政治に関心を持ち始めたのは、高校2年生のとき。大学入学共通テスト当日に東京大学のキャンパス前で起こった、当時17歳の男子高校生による刺傷事件というショッキングなニュースが大きなきっかけになったといいます。
「私は子どもの頃から勉強と水泳が得意で、それが自分のアイデンティティになっていましたが、高校に入ってからは両方ともうまくいかなくなり、自分の軸を見失っていました。また同時に『多くの量を効率良くこなす』という能力の育成を重視しすぎているような学習指導要領の内容に疑問を持ち始め、そんななかであの事件が起きたのです。犯人も自分と同じ高校2年生。『東大に入らないと自分の存在価値はない』という事件の動機に共感してしまう自分もいて、こんなに価値観を狭めるのが果たして本当の教育なのかと考えるようになりました」
政治や教育についてもっと議論できる場所を作りたいと、その年の5月に校内に愛校会を立ち上げ、最初に取り組んだのが冒頭の参院選解説ポスターの作成でした。当初、顧問の教員からは「特定の思想が発達することがないように」と釘を刺され、ポスター掲示についても「選挙啓発ポスターのコンクールに応募するものだったら良い」と条件を提示されました。そのうえで、ポスター作成後に別の生徒指導部長の教員に掲示規定について確認したところ、「政治活動にあたるからダメだ」と取り下げられてしまったのです。
「ポスターは参院選の仕組みについて解説したもので、特定の政党について触れた箇所もなく、本当に授業で扱われている内容そのままのものでした。それでも先生からは『参議院選挙という言葉がまず政治的』『教育委員会が定めたものだから、言い分があるなら教育委員会に言ってくれ』と言われて……」。疑問に思った白坂さんは、教員とのやりとりをSNSに投稿。それが大きく拡散されるや、学校側も態度を変え、翌日には掲示の許可が下りたといいます。
その後は取材依頼が殺到し、テレビのニュースでも大きく取り上げられることに。大多数は好意的な反応だったものの、一部からは「学校の許可を取らないとは何事だ」「どこかの政党にそそのかされているんじゃないか」という声や、同級生や卒業生からの「愛校心はないのか」といった非難が寄せられました。
1年経って思うこと 「多少なりとも世の中に一石を投じる発信ができたのでは」
一連の騒動について、白坂さんは今どのように受け止めているのでしょうか。
「後悔はまったくしていません。多少なりとも、世の中に一石を投じる発信ができたのではとも思っています。ただ、正直なところ『高校生なのに素晴らしい』と言って群がってくる、大人たちの気持ち悪さも感じました。私はそんなにたいしたことをやったつもりはなく、大人からの承認が欲しくてやったわけでもない。高校生の行動という点に過剰な価値を見出して殊更(ことさら)に褒めることは、ある意味社会から高校生を切り離し、子ども扱いしているようにも感じます。
また、あらゆる話がSNS上で消費されていく現代社会に、危機感を抱いてもいます。SNS、とくにツイッター(現・X)は、学校のような権力構造のある閉鎖的な空間から、弱い側が外の世界に発信していくための救済にはなる反面、一方的な発信が多く、実は対話からはほど遠いツールだと感じています。何かのバズやニュースがあれば、みんながそれを都合の良いように解釈して、安全圏から自分の立場や言説を補強しているにすぎません。これでは分断が加速するだけです。メディアも耳ざわりの良い極論や論破合戦、揚げ足取りばかりで、政治や時事問題について丁寧に対話できる場がなくなってきています。
とはいえ、私には今のところツイッター以外に発信媒体がありません。もっと現実に自分の考えを伝えていく場を作りたいです。メディアでもっとまともな議論ができるようになれば、世の中も少しずつ変えていけるでしょう。いずれは表に出る仕事がしたいと思っています」
現在は大学で社会学について学びつつ、今後は社会を良くするための手段としてプログラミングなども精力的に学んでいくということです。
※この記事は、「Hint-Pot」とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔)