Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

世界的長寿地域の希少性 人口減に苦しむ集落をベストセラー「IKIGAI」著者はどう見る?

公開日:  /  更新日:

著者:高村凛太郎、佐藤紅

世界的長寿地域のブルーゾーン 「田舎の昔ながらの生き方が一番長生き」

世界的に見ても長寿地域の沖縄県(写真はイメージ)【写真:写真AC】
世界的に見ても長寿地域の沖縄県(写真はイメージ)【写真:写真AC】

――沖縄県全体を見ると、以前は平均寿命で国内トップでしたが、今はその順位が下がっていますね。

「確かに今は、長野県やほかの県の平均寿命が上位に来ていますね。ただ、最近はコロナの影響など、いろいろあって難しいですよね。以前、科学的な予測でスペインの平均寿命が、2027年に日本を超えるという話もあったんですよ。そのほかにも、さまざまな予測がコロナの影響を受けてしまい、今後の動向が不透明になっています。

 ただ、これまで大宜味村に何度も行って、いろいろな人と話をしていて思うのは、田舎の昔ながらの生き方が一番長生きするんですね。長野県もそうで、緑や自然の中で生きる。コンビニの食べ物ではなく、自分で野菜を育てて知り合いの人と交換したり、自分たちで作ったもの、とったものを食べたり、居心地のいいコミュニティを作ったり。沖縄の北部をはじめ、まだ日本の田舎にはそういう文化が残っています。

 世界にはブルーゾーンといって、大宜味村のような世界的長寿の地域がいくつかあります。地中海のイタリアやギリシャ、それとコスタリカにも、大宜味村みたいなところがあるんですよね。来年そのなかのひとつ、ギリシャのイカリア島に行く予定なんですけど、そこにも同じような暮らしがあるんじゃないかな。

 実際は、沖縄だけが長生きの秘訣を持っているわけじゃないと思うんですよ。でも、その極意を都会の生き方のせいで、みんな忘れそうなんですね。そう考えると、人間にとって環境はとてもとても大事です。すごくいい遺伝子を持って生まれても、悪い環境に生きるとダメになってくる。だから自分の生きる環境には気をつけないといけない。でも、沖縄もさまざまな開発が進んで、たとえば那覇もすごく都会になって、変わってきていますよね」

――ガルシアさんは、私たち日本人が普段気づきにくい「生きがい」を持った生き方に注目し、その価値を世界へと広めました。多くの日本人は今、経済不況や格差に苦しんでいて、私たちのような若い世代も、日本の良さや価値を見出しにくい状況になっていると感じます。そうした現状をガルシアさんはどう感じますか?

「頑張りましょう!(笑) 僕も日本人の心になっていて、どうしようかなって思うんですね。でもこれが沖縄の人だったら、『なんとかなるさ』って言うんですけどね。それも大事だと思います。あんまり心配しすぎるとストレスになるから。

 でも、僕たちは次の世代に対して責任がありますよね。日本の技術力は高くて、以前は日本製品が世界中で使われていましたが、今はほかの国も頑張って、少しずつ状況が変わってきています。確かにすごい技術力を持つことは大事だけど、文化にも目に見えない力がすごくあるんですね。日本はそれを少し忘れているんじゃないかな。

 みなさんは米国がすごいと感じていると思うんだけど、なぜすごいのか。それはハリウッドがあるからなんですね。映画を作って、自分たちの文化を世界に発信している。米国はハリウッドがなかったら、それほどの影響力はないかもしれない。

 日本にとってそれはアニメや漫画、ビデオゲームです。僕が子どもの頃、テレビをつけたら『ドラゴンボール』が放送されていて、あとは『スラムダンク』や『キャプテン翼』とか。スペインのサッカー選手はみんな『キャプテン翼』を観ていたと思いますよ。だから今のスペインの選手は成長してきたんですよ。あとは僕も、漫画やアニメ、任天堂のゲームにいろいろと影響を受けて、“日本に行かなきゃいけない”って思って来ちゃった(笑)。

 それが最近、薄れてしまっているんですね。昔は黒澤明や北野武といった監督が映画を作って、『これが日本ですよ』と世界に届けてきた。それはとても大事だと思うんですね。もちろん、今も日本のアニメや漫画は、まだすごい人気がありますよ。だからどんどん頑張ってほしいです。文化は人間の心を動かすということを忘れないでほしいですね」

日本人が秘める「匠の精神」 伝統的なことには「知識が詰まっている」

――漫画やアニメ以外にも、日本には伝統的な文化がたくさんありますよね。そうしたものを引き継いでいくうえで、大切なことはなんでしょうか?

「最近、かっこよく見せるのがいいと思っています。たとえば、刀作り。これをかっこいい動画にしてインスタグラムに載せたら、みんなが『刀はすごい』って買い始める。そういう見せ方は、とても大事だと思う。

20年近く日本に住んでいるガルシア氏【写真:徳原隆元】
20年近く日本に住んでいるガルシア氏【写真:徳原隆元】

 あと、誰でも頑張ればできると思わせること。若い人でも、20年頑張ればこれができるようになるとか。伝統的なことには、知識が詰まっているんですよね。何百年も同じやり方が続いていることには意味があるんです。それをわかってから、新しいものを作っていくのが一番のポイント。今、みんなインターネットに頼りすぎて、インターネットがあれば何とかなると思ってる。でも、師匠と弟子、先輩と後輩といった関係性でしか、伝えられない情報もあるんですよ。こうした徒弟制度が、日本はちゃんとしています。バルセロナのサグラダファミリアの建築に日本の人が関わっているように、匠の精神が日本人にはありますよね」