からだ・美容
夏バテで胃腸の調子が悪い 「胃の老化」が原因の可能性も 見直すべき生活習慣とは
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教えてくれた人:佐藤 留美
8月は観測史上初めて、東京で30度を超える真夏日が31日連続するなど、異常な暑さが続く今年の夏。そろそろ夏の疲れがピークを迎え、食欲不振や胃もたれなど、胃の不調を感じている人もいるでしょう。夏は冷たい飲み物の摂取が多くなったり自律神経が乱れたりして、胃腸の働きが弱まりやすい季節ですが、実は加齢による胃の変化も夏バテしやすくなる原因のひとつだそうです。いつまでもおいしくごはんを楽しむには、胃を老化させないことが大切。普段から気をつけるポイントなどを、内科医の佐藤留美医師にお聞きしました。
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「胃の老化」で起こるさまざまな不調
若い頃は大好きだったのに、霜降り肉や揚げ物が重く感じる、甘いものを食べると胸やけがする――その原因は、「胃の老化」にあります。加齢による胃の変化のなかで代表的なのは、胃粘膜の萎縮です。胃の粘膜が萎縮すると胃酸分泌が低下し、胃粘膜を守る粘液を作る力が弱まった結果、いろいろな刺激を受けやすくなっていくほか、病原体への抵抗力も低下します。
また、年齢を重ねるにつれて、昔ほど食べられなくなったと感じることも。これは、加齢によって胃の弾力性も低下するため、一度に大量の食べ物を胃に溜めておくことができなくなるからです。さらに、胃の蠕動(ぜんどう)運動が弱まるため、小腸へ食べ物を運ぶ能力も低下します。つまり、たくさん食べていないように思っても、胃の中に食物が溜まってしまい、胃もたれを感じやすくなるのです。
たくさん食べすぎると、胸やみぞおちのあたりが痛んだり、胃酸が上がってきたりするような感覚を覚える、いわゆる胸やけが起きたりすることもあるでしょう。胸焼けは出すぎた胃酸が粘膜を荒らすことで起こります。胃酸が逆流して食道が炎症を起こす病気のことを「逆流性食道炎」と言いますが、食道と胃の境目で弁の働きをする筋肉が加齢で衰えることも原因です。
胃に負担がかかりやすい生活習慣を見直し
肌や髪の毛などのセルフケアは一般的になりつつありますが、胃もまた日頃のケアが必要です。まずは、食生活の見直しをしましょう。脂肪分やたんぱく質の多い食事、香辛料や酸味の多い果物、消化の悪い食べ物などをとる量は減らしましょう。一度に取る食事の量を減らし、腹八分目を心がけて胃の負担を減らすことも大切です。アルコールは胃酸の分泌を増やし、食道下部括約筋をゆるめます。また、コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインも胃酸の分泌が増えるため、飲みすぎには注意しましょう。
普段の行動としては、食後すぐに横になったり、寝る前に食事を取ったりすることは避けてください。ベルトやコルセット、着物の帯など、お腹を締め付けるものなどは身につけないようにしましょう。
タバコは逆流性食道炎を悪化させるので、禁煙を心がけることも大切です。さらに、胃内がヘリコバクターピロリ菌に感染していると胃粘膜が萎縮するほか、胃がんの原因になります。医療機関を受診して、ヘリコバクターピロリ菌に感染していないか、医師の診察を受けると良いでしょう。
胃もたれを感じた場合、すぐに治すには、やはり胃薬の服用が必要です。胃薬には種類がたくさんあるので、医師の診察を受け、適切な治療薬を処方してもらって早めに対処しましょう。
(Hint-Pot編集部)
佐藤 留美(さとう・るみ)
久留米大学医学部卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などのアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。