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仕事・人生

地方移住のリアル 東京在住の経営コンサルタントが「協力隊」を始めたワケ

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

東京では経験できなかった自然とのふれあい 恵みを満喫中

 季節感が乏しくなった昨今ですが、「立科町にいれば四季を満喫できます」と中平さん。春はカッコウの鳴き声が聞こえ、リンゴの花が咲き、山菜のお裾分けをいただくこともあります。夏はクーラーを使うことも少なく、車で30分足らずの高原エリアに足を延ばせば、とにかく涼しい。人工衛星が肉眼で見えるほど澄んだ星空は圧巻です。

 タマネギ、ジャガイモ、トマトにキュウリと夏野菜を買うことはほぼありませんし、秋はおいしい新米の季節です。紅葉が黄色、橙や赤と鮮やかに色づきます。冬は雪化粧の浅間山と蓼科山……。おすすめできる材料を挙げればきりがありません。

 そうしたなかでも感動したのは、おいしい水とリンゴだったそうです。

 毎朝、野菜やフルーツ、天然オリゴ糖などで“健康ジュース”を作るのが日課という中平さんは、「毎日1つは食べたい」という無類のリンゴ好き。長野県内でもおいしいリンゴの産地として知られる立科町では、早いものでは9月頃から収穫が始まり、11月に入ると主力品種の「ふじ」が多く出回ります。

 移住相談の拠点となる町の施設「ふるさと交流館 芦田宿」は町の人たちの交流の場でもあり、いろいろな人が顔を出します。そのなかにはリンゴ農家も少なからずいて、小さいものや少しだけ鳥に突かれ商品にならない「はぶき」と呼ばれる規格外のリンゴを箱で持ってきてくれます。もちろん無料です! 「ささやかだけど、これがうれしいんです」とメリットを享受しています。

 ただ、悩みは本業と「協力隊」のダブルワークでなかなか時間が取れないこと。近所に無料で畑を借りることができたので、これまで無縁だった家庭菜園に初挑戦したものの、「庭や畑の草取りが大変で遊びに行けませんし、イングリッシュラベンダーを植えているけど取り切れない」と苦笑い。

 とはいえ、東京では経験できなかった自分で育てたトマトやナス、キュウリ、イチゴを味わう至福の時間は、忙しい日々のなかでリフレッシュする機会になっているようです。

(芳賀 宏)

芳賀 宏(はが・ひろし)

千葉県出身。都内の大学卒業後、1991年に産経新聞社へ入社。産経新聞、サンケイスポーツ、夕刊フジなど社内の媒体を渡り歩き、オウム真理教事件や警視庁捜査一課などの事件取材をはじめ、プロ野球、サッカー、ラグビーなどスポーツ取材に長く従事。2019年、28年間務めた産経新聞社を早期退職。プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)で広報を担当したのち、2021年5月から「地域おこし協力隊」として長野県立科町に移住した。