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地方移住のリアル 50代で長野へ移住した元記者が感じたこと 「自身の“心の持ちよう”」
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「地域おこし協力隊」の産業振興担当として、2021年に長野県立科町へ移住した元新聞記者の芳賀宏さん。リンゴ農家の手伝いや立科町のPRといった活動に従事しています。連載第5回の今回は、近年話題に上がることが多い、都会暮らしと田舎暮らしの近所づきあいにおける“すれ違い”について。実際に東京から地方へ移住した芳賀さんが感じた、地方移住のリアルをお伝えします。
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地方地域にはそれぞれの“しきたり”が存在 なじむための歩み寄りは必要
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、昨今は移住への注目が増しています。田舎暮らしといえばのんびりしたイメージがある一方、近所づきあいの濃密さなど生活環境に抵抗感を持つ方もいるでしょう。最近では、福井県池田町による移住者向けの提言「暮らしの七か条」が話題になったのも記憶に新しいところです。「都会風を吹かせるな」「品定めされていることを自覚して」などとする内容に、ネット上では賛否の意見が飛び交いました。
大なり小なり、地域にはそれぞれの土地の文化や風土があります。長野県立科町にも、当然のことながら地域の“しきたり”があります。夏の草刈りは避けられず、地域によっては参加しないと「出不足」と称する罰金を取られます。ゴミ集積場の管理などに経費がかかるため、居住区ごとに区費を徴収されるのも理由はわかります。私は草刈りも苦になりませんが、住んでいるアパートの約30世帯のうち、参加するのはわずか数人。管理費も支払っているので、都会なら「そのためにお金を払っているのに」と考える方がいても不思議ではありません。なにせ午前6時の集合は大変ですし、知らん顔しようと思えば可能です。
ただ、田舎ではそうした場でのコミュニケーションは、“よそ者”が土地になじむためのひとつの手段であり、参加することで信頼につながるということを実感しています。地元出身者でも周囲に溶け込まない人はいますが、それを理由に村八分になったという例は知りません。とはいえ、こういった地域でひとりで生きていくのには限界があります。「郷に入っては郷に従え」も「住めば都」も考え方しだい。居心地の良さは自身の“心の持ちよう”だと思うのです。