仕事・人生
元記者が体験した地方移住 田舎暮らしで感じたお金のリアルと生活の知恵とは
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元新聞記者の芳賀宏さんが「地域おこし協力隊」の産業振興担当として、長野県立科町に移住して3年目。2度越した真冬の現状や、東京で生活していた頃には考えられなかった出来事など、連載第9回の今回は、寒さが厳しい地方地域ならではのリアルな暮らしについてお伝えします。
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GWでも石油ストーブは必須 代わりに夏は冷房いらず
立科町の様子については以前お伝えしましたが、移住を考える方にとって必要なのは生活者目線での情報なのではないでしょうか。避けて通れないのは「冬の寒さ」と、やはり「お金」かもしれません。
標高約1500メートルの高原に位置する女神湖は凍結しますし、スキー場などを含む山エリアの寒さが東京と段違いなのはもちろん、同約700メートルに位置する里エリアの冬もなかなかです。家の中で吐く息が白いことなんて当たり前。車に置き忘れたペットボトルは翌朝になれば凍っています。
移住したのは2年前のゴールデンウィーク中、4月末でした。地元の方から事前に聞いていたので覚悟していたとはいえ、5月に石油ストーブのスイッチを入れたのは人生初。大阪から来た同期の「協力隊」隊員は赴任当初、暖房器具を持ってきていなかったそうで、「まさかとは思ったけど、妻と一緒に持ってきた服を全部着込んで震えていました」と笑いながら語っていた姿が思い出されます。
そして冬本番を迎えると、東京では考えたこともなかった生活実態に直面します。
2度の越冬を経験して学んだ、寒さが厳しい地方特有の生活の知恵
○窓ガラスに“プチプチ”を貼る
梱包材の“プチプチ”は、こちらではもっぱら断熱材です。空気の層を作ることによって室内の熱が逃げるのを防ぐわけですが、立科町のホームセンターには専用の粘着テープ付き“プチプチ”をはじめ、窓に貼る防寒用品が多数売られています。
○出勤の10分前には車のエンジンをかけておく
雪が少ない地域とはいえ、毎日のように霜が降りるので、朝は車のフロントガラスが真っ白に凍結しています。無理にガリガリ削るのはご法度。エンジンをかけてデフロスターの風を送り、外側からは解凍用のスプレーを吹き付けて視界を確保します。ちなみにこのスプレーはスーパーマーケットでも買えます。そういえば、1年目はウィンドウウォッシャー液を寒冷地仕様のものに替え忘れ、凍結して出なかったこともありました。
○氷点下になりそうな日は風呂の水を抜いてはいけない
寒い日は排水管に残った水が凍ります。凍結防止の自動ポンプが付いている給湯器があるのですが、浴槽の給湯口の上まで水が張られていないと作動しません。うっかり忘れると凍ってしまい、寒い夜に風呂に入れないという事態に見舞われる可能性も。
○水洗トイレは水を流しっぱなしにする
流すといっても、チョロチョロとほんの少量を出し続けるのですが、タンク横のつまみを回すと流れる仕組みです。一見もったいないようでも、トイレが凍ることを考えたらゾッとします。
今年も、お正月から水道管が破裂して業者を呼んだお宅がありましたが、近年では真冬でもマイナス10度を下回るのは数日程度ですし、寒さがかなりゆるんできたというのが地元の方の印象のようです。私自身、2度の冬を過ごしてなんとなく慣れてきたと感じるのは、仕事でいろいろな国をめぐった経験で培った適応能力のおかげかもしれません。
“プチプチ”を貼ったり、解凍スプレーを用意したりと、寒冷地ならではの手間と出費が発生することはおわかりいただけたと思いますが、やはり燃料費は覚悟が必要です。