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新婦が子どもの存在を告白… 披露宴は「子どもは別室で」と新郎 悩み抜いた末のけじめ、変わった未来
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結婚式は何年たっても人生の一大イベントです。出会ってから交際、プロポーズ、両家顔合わせと段階を重ね、ようやくたどり着いたお披露目の舞台はやはり特別な1日。ところが、誰もが幸せいっぱいにその日を迎えるわけではありません。新婦に子どもの存在を突然打ち明けられ、結婚式に否定的になった新郎。波乱含みのカップルはその後……。担当したホテル雅叙園東京のウェディングプランナー、杉本里佳さんに詳細を聞きました。
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式場見学初対面での違和感 「何を聞いても黙る新郎様」
杉本さんが夫妻と初めて会ったのは、昨年の5月でした。結婚式を挙げたいと相談があり、杉本さんは新規の顧客担当として、初回の打ち合わせに臨みました。
ところが、すぐにただならぬ気配を察します。よくしゃべる新婦とは対照的に、新郎はどこか浮かない表情。それどころか、杉本さんを前にしてもひと言もしゃべりません。少なくとも幸せな空気は伝わってこない状態でした。
「違和感がすごくて、何を聞いても黙る新郎様だったので私も黙り返してずっと我慢比べみたいになりました。そしたらため息をつきながら話が出てきて……」
結婚を意識するようになってから、子どもの存在を知り、感情を整理できずにいるのが原因でした。
披露宴は親族のみで20人ほどを予定していました。会場視察のとき、新郎は柵を作るか、ベビーシッターをつけて子どもを別室に配置することを希望。「目の届かない位置に座らせてほしい」と訴えました。杉本さんは無理難題に頭を抱えました。
子どものことはまだ割り切れない。でも、新婦への愛情までは変えることはできない。そんな思いが胸に去来する新郎は、「けじめとして結婚式を挙げたい」と涙をためながら話したといいます。
後日談に驚き 「衝撃で、その光景だけで泣きました」
杉本さんは新郎と話し合いを重ねます。新婦は子どもを新郎との間に座らせたかったようですが、新郎の気持ちを汲み、最終的には新婦を挟んで左隣の席に落ち着きました。
披露宴では新郎、新婦、子どもの3人で撮った写真はありません。しかし、後日、新婦からゲストが偶然撮影した3ショットが杉本さんのもとに送られてきました。新婦の喜びが伝わり、これが宝物になったといいます。
杉本さんは、この挙式までのエピソードをリクルートブライダル総研「GOOD WEDDING AWARD2023」で披露。変化する結婚式やウェディングプランナーの役割を見つめ、業界の発展に貢献することを目的とする栄誉あるイベントで、ソウル賞を受賞しました。ウェディングプランナーとしての6年の経験の中でも印象深い仕事だったそうです。
そして、この話には後日談も。披露宴から1年が過ぎた今年8月、再び杉本さんのもとに家族から連絡が入りました。「会いに行っていいですか」。当日ホテル雅叙園東京で出会ったのは、子どもと手をつなぐ旦那さんの姿。七五三のお祝いをしに家族3人で結婚式を挙げた思い出の場所を訪れたそうです。
「お疲れ様みたいな言葉を言いに手をつないで来たんです。エッて。結婚式をきっかけにお互いの本当の思いを知ることができて、だから一緒にいられるようになった。子どものことも2人で向き合えるようになった。結婚式がなかったら絶対生まれなかったことと言ってくださって、本当にうれしかったです」
縮まった子どもとの距離。思いがけない言葉もありました。
「パパって呼んでいたんですよ。事情を知らない人からすれば普通なんですけど、私からしたらもう衝撃で、その光景だけで泣きました。最初の雰囲気からは絶対想像できない。子どもの姿は見たくないとか言うぐらいの人が、子どもに笑いかけている。結婚式の力はすごいと思いました」と杉本さんは結びました。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)