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サンマの内臓に苦みが少ない理由とは 栄養や相性の良い組み合わせなど栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実
サンマは秋の味覚の代表。手頃な価格で手に入る魚でしたが、近年は漁獲量が減り高級魚となりつつあります。せっかくなら、サンマの栄養を残さず丸ごといただきたいところ。内臓を含めどんな栄養があるのか、また塩焼きによく添えられる大根おろしやすだちとの相性など、サンマについて栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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サンマの優れた栄養 大根おろしとすだちとの相性は?
サンマには、さまざまな栄養が含まれています。代表的なものは、オメガ3脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペタンエン酸)の良質な魚油です。DHAは脳の活性化、EPAは血流を促し血栓予防、コレステロールや中性脂肪を減らし動脈硬化を防ぐなどの効果が期待されています。
このほか、目の健康や皮膚の粘膜を強くして免疫力を高める働きがあるビタミンA(レチノール)、ビタミンB12や鉄も含み、いわゆる貧血が気になる人は積極的に摂取したい栄養成分です。体の組織に必要なたんぱく質、丈夫な骨や歯を作るのに欠かせないカルシウムも含みます。たんぱく質の働きを活性化させたり、カルシウムの吸収を促したりするビタミンDも含むなど、栄養バランスに優れた食材です。
サンマの代表的な食べ方といえば、塩焼きを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。大根おろしやすだちを添えることが多く、どちらも口の中をさっぱりとさせてくれるうえ、実は栄養面でも理に適っているといえるのです。
大根おろしには、糖質を分解するアミラーゼ、たんぱく質を分解するプロテアーゼ、脂肪を分解する酵素のリパーゼなどが含まれていて、一緒に食べることでサンマに含まれるたんぱく質や脂質、主食であるごはんの消化を助け、胃もたれなどを防いでくれます。また、すだちにはかぼすやレモンと同様に、柑橘類の酸味成分であるクエン酸、ビタミンCが含まれており、サンマの鉄やカルシウムの吸収を良くする特徴が。栄養を効率的にいただける、相性の良い組み合わせです。
内臓の苦味が少ないのはサンマが「無胃魚」だから
新鮮なサンマは、しっかりと火を通せば寄生虫のアニサキスの心配はなく、味わい深い内臓も丸ごと楽しめます。内臓がおいしいのは、サンマが「無胃魚」と呼ばれる胃のない魚で、食べたものを短時間で消化し、排泄できるためです。サンマは、日中にプランクトンを食べて、夜は何も食べません。漁は夜間に行われるため、とれたサンマの内臓は空っぽの状態。ほかの魚と比べると苦味がなく、おいしく食べることができるのです。
内臓にはDHAやEPAが多く含まれています。食べるか食べないかは好みが分かれますが、栄養を逃さずいただく場合は、内臓も楽しむと良いでしょう。
店頭で新鮮なサンマを選ぶ際は、黒目の周りが透明で澄んでいて、口先と尾が黄色いものを。腹が太くてハリがあるものがおすすめです。サンマは購入したらすぐに食べるようにするのが良いでしょう。内臓がついたままの状態だと日持ちせず、おいしく食べられるのは1日程度。すぐに食べない場合は、鮮度の良いうちに内臓などを処理して、冷蔵または冷凍保存しましょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾