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低カロリーな梨の意外な栄養成分 日持ちさせる保存方法など栄養士が紹介
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教えてくれた人:和漢 歩実
シャリシャリとした食感で、みずみずしい果汁がおいしい梨。いまや多様な品種があり、産地によって収穫時期が異なることから、晩秋まで次々と出荷されていきます。梨にはどのような栄養が含まれているのでしょうか。また、保存のコツとは? 栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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独特の食感は食物繊維の成分 整腸作用も期待
日本の梨は、大きく分けると「赤梨」と「青梨」があります。赤梨はやや赤みがかった褐色の皮で、味は酸味よりも甘味が強く、やわらかい果肉が特徴。「幸水」や「豊水」などが代表的な品種です。一方、青梨は皮が黄緑色っぽく、酸味が強めで甘酸っぱい味わい。「二十世紀」や「八雲」「菊水」などがあります。
梨の特徴的な栄養は2つあり、ひとつ目は石細胞とも呼ばれる不溶性食物繊維のリグニン。梨のシャリシャリとした独特の食感は、このリグニンが蓄積したものです。ふたつ目は、糖の一種のソルビトール。キシリトールと同様に低カロリーで、虫歯になりにくい成分としても知られ、整腸作用も期待されています。そのため意外かもしれませんが、梨は便秘が気になる人におすすめの食品です。
このほか、利尿作用や疲労回復で注目されるアミノ酸の一種のアスパラギン酸、余分な塩分を体外へ排出するカリウムも含まれています。ちなみに、梨をすりおろしてタレと一緒に肉を漬けておいてから焼くと、肉がジューシーでやわらかい仕上がりに。これは梨に含まれる、プロテアーゼというたんぱく質を分解する消化酵素の働きによるものです。
梨はほかの果物と比べると低カロリー 皮にも栄養が?
梨は約88%が水分なので、カロリーが低めです。日本食品標準成分表2020年版(八訂)を基に、可食部100グラムあたりのエネルギーを主な果物と比較すると次の通りです。
○エネルギー
・梨 38キロカロリー
・ミカン 49キロカロリー
・リンゴ 53キロカロリー
・ブドウ 58キロカロリー
・柿 63キロカロリー
梨は皮にも栄養が含まれ、皮の近くが甘いといわれています。栄養摂取の観点からは、リンゴのようにしっかりと洗って皮も食べたほうが良いのですが、梨の皮は硬くて口に残りやすく、好みが分かれるところです。また消化しにくいので、大量に食べると胃腸の負担になることもあります。せっかくならば、おいしく食べましょう。
保存は冷蔵庫の野菜室で 軸を下にするのがコツ
梨は、あまり日持ちしません。洋梨と違って追熟する果実ではないので、なるべく早く食べ切るのがおすすめです。保存する場合は、常温ではなく冷蔵保存すると長持ちします。梨は乾燥を嫌うため、一個ずつラップをするか、ポリ袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室に入れてください。
このとき、梨の軸側を下に、おしり側を上にして保存するのがポイントです。軸を下にすることで梨の呼吸が抑えられ、劣化のスピードがゆるやかになるといわれています。たくさん買ってしまって食べ切れない場合はぜひ、しまう際の梨の向きに注意して冷蔵保存しましょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾