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ホタテ貝 三日月状のオレンジ色の部分の正体とは 食べても良いのか聞いた
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教えてくれた人:和漢 歩実
刺身や寿司のネタ以外に、バーベキューなど網焼きにしてもおいしいホタテ貝。貝殻がついたものの中に、オレンジ色の膨らんだ部分が存在することがありますが、その正体はなんなのでしょうか? 食べても良いものなのかなど、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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ホタテの名の由来 貝殻を帆のように立てて移動?
ホタテは、二枚貝の一種。長さ15センチほどの扇形の殻を開くと、大きな貝柱が1つだけあるのが特徴です。多くの二枚貝は貝柱が2つありますが、ホタテの場合は成長する過程で一方が退化し、1つだけになります。そのため貝柱が、大きく育つのです。
ホタテの名の由来は、その大きな貝柱をいかし、貝殻を帆のように立てて波間を素早く泳いで移動したことにあるといわれています。そうした話から、江戸時代に「帆立」と書かれるようになったとか。
天然のホタテの生息場所は水深20~30メートルの海域で、分散して単独で行動するといわれています。現在、市場に出回るのは養殖ものが多く、北海道をはじめ青森県や宮城県などで盛んです。そのため、年間を通しておいしいホタテが味わえます。
帯状のものは「エラ」 三日月状の部分は「生殖巣」
市販のホタテは、一般的に貝柱が生の状態かボイルされたものが売られていることが多いでしょう。しかし、貝つきで丸ごとの活ホタテを手に入れたときなど、貝柱以外のものは食べて良いか迷うことがあるかもしれません。結論からいうと、ホタテの黒い部分は食べないほうが好ましく、オレンジ色の部分は食べられます。
ホタテの部位は、貝柱以外に大きく分けると、エラ、生殖巣、ヒモ、ウロ(中腸腺)があり、貝の中心にある円形のものが貝柱です。一般的には乳白色をしていますが、うっすらと赤みがかった色の場合もあります。これは、ホタテがエサとして食べているプランクトンの色素カロテノイドの一種アスタキサンチンが沈着したものではないかといわれていて、風味に差はなく、食べて問題ありません。白身魚であるサケの身の色が赤い理由と同じです。
貝柱の横にある、オレンジ色の帯状のものがエラ。好みによりますが食べられます。さらにその横にある三日月状の部分が、生殖巣と呼ばれるものです。オスとメスで色が異なり、メスはオレンジ色をした卵巣を、オスは乳白色の精巣を持ちます。つまり、三日月状のオレンジ色の部分は、ホタテ貝のメスの卵巣です。エラも生殖巣も、生ではなく、煮たり焼いたりして食べましょう。その外側を囲む細長い部分がヒモです。ホタテのヒモは旨みが詰まっているので、好きな人は多いでしょう。
一方で食べられないのは、ウロ(中腸腺)です。貝殻のつなぎ目近くにある黒っぽい色をした部分です。一般的にカニのみそやイカのワタの部分などが中腸線に相当して、栄養豊富といわれますが、ホタテのような二枚貝は貝毒を持ち、食中毒になることもあります。毒性のあるものを摂取した際に、その毒がウロに蓄積するためです。気をつけましょう。貝殻ごとホタテを手に入れた場合は、貝柱だけではなく、ぜひほかの部分も楽しみたいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾