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風邪のひき始めやのどの痛みに 「レンコンが良い」といわれるのはなぜ? 栄養士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

レンコン湯(写真はイメージ)【写真:写真AC】
レンコン湯(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 空気が乾燥し、肌寒くなってきました。風邪が気になる季節です。昔から、風邪のひき始め、のどの痛みには「レンコンが良い」といわれていますが、実際の栄養はどうなのでしょうか? 穴が空いている形から「未来を見通す」とされ、日本では縁起の良い食材としてさまざまな料理に用いられるレンコン。“真相”を栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

レンコンの栄養 3つの成分がカギ?

 レンコンは、古くからなじみのある食材です。日本へは中国から伝わったとされ、諸説ありますが、江戸時代にはすでに現在の在来種のもとがあったとみられています。当時からレンコンの薬効は注目されており、空咳やのどの痛みに重宝されていたようです。中国の伝統医学「中医学」では、レンコンを食養生に用いてきました。昔の人は効能を感じ取り、暮らしの知恵として取り入れていたのでしょう。

 現代でも「のどが痛い」とか「咳が出る」といった風邪の初期症状があると、昔ながらの暮らしの知恵として、まずレンコン汁やレンコン湯を食べる人が多いのではないでしょうか。科学的にレンコンがどれくらい症状を緩和するかなど数値的なデータはありませんが、言い継がれている理由を現代の栄養学から考えると、レンコンに含まれる次の3つの成分がポイントといえそうです。

 一つ目は、ビタミンC。抗酸化作用があり、風邪の初期症状に役立ちます。意外かもしれませんがミカンよりも多く、熱に強いのが特徴です。日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに100グラムあたりでみると、レンコンは48ミリグラム、ミカンは32ミリグラムです。

 二つ目は、ポリフェノールの一種のタンニン。アクの一種で、レンコンの切り口が黒ずむ原因ですが、ビタミンCと同じように抗酸化作用があります。そのほか、消炎や収斂作用、血液凝固作用があり、風邪の症状であるのどの痛みや血が混ざった痰などの緩和に期待できる面も。

 三つ目は、粘りのもとになる水溶性食物繊維のイヌリン。レンコンをすりおろした際にとろみが出ますが、これがのどの粘膜を強化するといわれています。

レンコンはハスの地下茎 穴の役割とは

 このように栄養豊富なレンコンですが、穴の空いた独特の形から「先を見通せる」縁起の良い食べ物としても親しまれてきました。正月料理など、めでたい席には欠かせない存在でしょう。

 なんのためにこの穴があるのかというと、レンコンが呼吸するためです。レンコンはハスの地下茎で、空気が少ない水底の泥の中で育ちます。水上にある葉から取り入れた空気を地下茎まで届けるために、「通気口」の役割として穴が開いているのです。穴の数は、真ん中に1個、周囲に7~9個あるのが一般的。余談ですが、穴の形が整ったレンコンは良品といわれています。

 風邪は万病のもと。ひどくなる前に医療機関の診察を受けるなど早めの対策は必要ですが、昔ながらの知恵も暮らしに取り入れて、健やかに過ごしたいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾