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日本独自の「十三夜」 十五夜との違いは? 一方しか見ない「片見月」が縁起が悪いといわれる理由も

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

十三夜(写真はイメージ)【写真:写真AC】
十三夜(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 秋はお月見の季節です。2023年10月27日は、「後の月」と呼ばれる「十三夜」です。お月見といえば、中秋の名月「十五夜」(2023年9月29日)に月を愛でた人も多いでしょう。しかし、お月見は十五夜で終わりではありません。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。十五夜や十三夜など、お月見にまつわる伝承について紹介します。

 ◇ ◇ ◇

十三夜は日本独自の風習 十五夜と併せ「二夜の月」に

 十三夜とは、旧暦9月13日のお月見のことです。旧暦8月15日の十五夜の約1か月後にめぐってくることから、「後の月」とも呼ばれます。十五夜は中国から伝わった風習ですが、十三夜のお月見は日本独自のものです。

 一説によると、日本で十三夜にお月見をするきっかけとなったのは、天気にあるようです。十五夜となる旧暦8月15日の日本は、台風や長雨の季節。雲に隠れて月が見えない「無月(むげつ)」になることが多かったとされています。そこで、晴れることが多いといわれる旧暦9月13日にお月見をする風習が始まりました。

 十五夜は、満月か満月になる直前の丸い大きな月ですが、十三夜は満月になる途中の少し欠けた“未完成”の月。それぞれに美しい十五夜と十三夜の両方を「二夜の月」と呼び、名月として愛でるようになりました。

「片見月」は不作…縁起が悪いとされる由縁

 そこから、どちらか一方の月しか祝わないことを「片見月」と呼ぶようになり、いつしか「不作になる」など忌まれるようになったといいます。そもそも、江戸時代に庶民に広がったお月見は、秋の収穫を感謝する風習。二夜の月の両方を祝ってこそ“正式な感謝”になると考えられたことにあるようです。十五夜と十三夜の月の両方、同じ場所から眺めるのが良いとする地域もあります。

 現代では、十三夜はなじみがやや薄いせいか、十五夜だけお月見をする人が多いのかもしれません。「十五夜はしたのに十三夜の月見をしないのは、縁起が悪い」との言い伝えがあるのは、「二夜の月」の考えが基になっているともいえるでしょう。十三夜のお天気が気になるところですが、短時間でも感謝の気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。

十三夜は「栗名月」「豆名月」とも

栗などを供えても(写真はイメージ)【写真:写真AC】
栗などを供えても(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 家庭で十三夜を祝う場合は、十五夜と同じくススキを飾ったり、月見団子を用意したりします。十三夜の月見団子は、十三夜にちなみ13個、または3個供えるのが基本です。お皿に盛るときは、並べるのではなく、山のように積み上げると良いでしょう。お供え物の団子をできるだけ月に近づけることで、感謝の思いや願いが届きやすいと信じられてきたからです。

 また、栗や豆の収穫時期にあたる十三夜は、「栗名月」や「豆名月」とも呼ばれました。栗や豆はもちろん、キノコ、銀杏、ブドウ、柿など、季節の野菜や果物を供えます。お供え物だけではなく、栗やキノコを使った炊き込みごはん、旬の果物を使った菓子など、十三夜に感謝を込めて秋の恵みをいただくのも良いでしょう。

【参考】
「吉を招く 言い伝え 縁起と俗信の謎学」岩井宏実(青春出版社)
「眠れなくなるほど面白い 図解 日本のしきたり」千葉公慈監修(日本文芸社)

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu