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「やっぱり僕は“お母”のごはんが食べたい」 プロ野球選手が愛してやまない“地元の味”

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

今シーズンの成績は自身過去最高。来シーズンに期待が高まる埼玉西武ライオンズ・佐藤龍世選手【写真提供:埼玉西武ライオンズ】
今シーズンの成績は自身過去最高。来シーズンに期待が高まる埼玉西武ライオンズ・佐藤龍世選手【写真提供:埼玉西武ライオンズ】

 プロスポーツ選手として活躍する頑強な体を作り上げた“おふくろの味”とは、どのようなものなのでしょうか。埼玉西武ライオンズのプロ5年目・佐藤龍世選手には、「いつでも食べたい」“地元の味”があるといいます。選手として活躍する背景、しっかりと体を作った原点にどのような味わいがあったのか、その秘密に迫りました。

 ◇ ◇ ◇

帰れるのは年末の1度 「やっぱり僕は“お母”のごはんが食べたい」

 佐藤選手が生まれ育ったのは、北海道厚岸郡厚岸町。カキで有名な町です。けがでプロ野球選手への道を断念したという父親はカキ漁師。新鮮な魚介類が目の前にたくさんある環境で育ちました。

 プロ野球選手の日常は忙しく、毎年1月には自主トレーニング開始。2月からは春季キャンプ、3月のオープン戦を経て春にプロ野球が開幕すると、10月のシーズン終了までゆっくり休む暇はありません。わずかな休みを経て、すぐにフェニックスリーグ(主に若い選手が出場する教育リーグのこと)や秋季練習、秋季キャンプと続くので、ホッと一息つけるのは12月くらいだといいます。

「実家に帰るのは年に1度、年末くらいです。そのときは地元の友人たちと食事しますが、やっぱり僕は“お母”(おかあ)のごはんが食べたいんです。外で食べてきても、家に帰って食べますね」

 実家では黙っていても大好物の母特製カレーが出てくるそうですが、「カキはいつでも食べたい。子どもの頃からずっと食べていますが、飽きたことがないんです。生でも食べるし、みそ汁もありますね」と“カキの町”らしい思い出の味も。

佐藤選手の“お母”特製「牡蠣ラーメン」【写真提供:佐藤龍世】
佐藤選手の“お母”特製「牡蠣ラーメン」【写真提供:佐藤龍世】

 今年はシーズン終了直後にも帰省するチャンスがあったようで、「“お母”が『牡蠣ラーメン』を作ってくれました。みそ味なんですけど、カキが入っていておいしいんです」とのこと。さらに、「地元のラーメン店ではけっこうあります」と教えてくれました。これもまた厚岸ならではの味かもしれません。

 年末に実家に戻ると、「鍋も多いですね。カキのほかにもメンメ(編集部注:北海道の高級魚で、正式名はキチジ)とか魚介類がたくさん入っていて、これもおいしいんですよ」と、北海道の海の幸がたっぷり入った鍋に舌鼓を打っているそうです。

野球教室を開催したことで強めたふるさとへの思い

 そんな佐藤選手は昨年オフ、初めて地元で野球教室を開催しました。「やっぱり初心に返るというか、ここが原点。こんな小さな町からプロ野球になれた。野球人口が減っているという話を聞いたりしますけど、夢は叶うんだと子どもたちにも教えたいので、今年も野球教室をやりたいですね」と、ふるさとへの思いを強めたと語ります。

 西武に入団後、一時期は北海道日本ハムファイターズにトレード移籍していましたが、2023年から西武に復帰。とくにシーズン終盤には驚異的な出塁率もあり、三塁手としてレギュラーの座をつかみました。

 この飛躍の一年を、「最後のシーズンくらいのつもりで臨んでいました。ホームゲームのときは試合の前後に必ず打撃練習を一日も欠かさずにやりました。それが苦しいときの支えになったと思っています」と振り返ります。

 昨シーズンは思ったような活躍ができず、「契約更改前にちょっと両親をひやひやさせてしまった」といいますが、今年は「少し安心させられたんじゃないかな」と少しホッとした様子。

 真価を問われる来シーズンに向け、「今年以上の成績を残さないと認めてもらえない」と意欲をみなぎらせています。そんな佐藤選手の原点には、しっかりと体を作ってくれた“おふくろの味”がありました。

◇佐藤龍世(さとう・りゅうせい)
1997年1月15日、北海道厚岸郡厚岸町生まれ。内野手(二塁、三塁、捕手)、背番号58。高校時代には甲子園出場の夢は叶わなかったものの、北東北リーグの富士大学では3年の春に首位打者、最多本塁打、同秋は最多打点を記録。2018年のドラフト7位で埼玉西武ライオンズに指名を受けた。2019年には開幕一軍スタートを切り、2021年8月に北海道日本ハムファイターズにトレード移籍したが、翌年11月には西武に復帰した。2023年は自己最多となる91試合に出場。打率.263、3本塁打、16打点と、いずれも個人最高記録を残している。

(芳賀 宏)