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「何度でも『ありがとう』と言いたい」 自身最高成績を収めたプロ野球選手 母と妻へ感謝の思い

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

マイナスからプラスへ 自己肯定感を高めてくれる妻の存在

 そして今は、妻(2018年結婚)が大きな支えになっています。彼女はマッサージを学び、僕の体のメンテナンスをしてくれるだけでなく、良いときも悪いときもよく野球の話を一緒にしてくれます。ナイトゲームが終わって家に帰ってから、深夜まで話をしたことは何度もあります。

 彼女に一貫しているのは、僕の自己肯定感を高めてくれるような声がけをしてくれることです。苦しんでいると、「こうやって気持ちを持っていったら?」と具体的に解決策まで提示してくれる。母が寄り添って一緒に喜んだり沈んだりしてくれたのに対し、妻は逆の視点で落ち込んでいるときの気持ちをプラスに持っていってくれるのです。

 両親、祖母、そして妻。今はみんなが僕の活躍を心の底から喜んでくれていると感じます。実際に昨年、あまり思ったような結果が出せなかったときは、みんながつらそうでした。その分、今年は活躍できたので、その振り幅が大きかった分だけ喜びも大きかったように感じました。

 もちろん妻には、誕生日などにプレゼントを贈ることがあります。でもそれ以上に、お金では買えない、本当に特別なもので恩返しをできたらと思っています。今シーズンは2勝できたので、実家の両親と妻にそれぞれウイニングボールを渡すことができたのが、なによりうれしかったです。

 ここで名前を挙げた家族や恩師以外にも、大学時代から体のケアをしてくださる先生など、数え切れないほど感謝を伝えたい人はたくさんいます。家族には日頃から言葉で伝えているつもりですが、野球を続けさせてくれた両親に、そして野球に集中する環境を作ってくれる妻に、改めて何度でも「ありがとう」と言いたいです。そしてマウンドで活躍する姿を見せることで喜んでもらえたら、なにより支えてくれるみんなへの恩返しになると思っています。

◇田村伊知郎(たむら・いちろう)
1994年9月19日、兵庫県神戸市生まれ。投手、背番号40。報徳学園高校1年生の夏、甲子園に出場し「スーパー1年生」「報徳のイチロー」と騒がれた。進学した立教大学野球部では通算8勝10敗。2016年のドラフト6位で埼玉西武ライオンズに指名を受けた。プロ1年目の2017年5月にプロ初登板。2020年は自己最多となる31試合に登板した。2021年9月24日の千葉ロッテマリーンズ戦でプロ5年目、66試合目にして初勝利。2023年は24試合に登板し2勝1敗6ホールド1セーブ、防御率1.52を記録した。最速151キロの速球とチェンジアップなどの変化球を武器に、昨年8月には13試合無失点を続けるなど、勝ちパターンで起用された。

(芳賀 宏)