Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

ライフスタイル

戸建ての購入と賃貸で意見が割れる妻と夫 不動産のプロが指摘する“議論すべきポイント”とは

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

教えてくれた人:姉帯 裕樹

購入と賃貸、戸建てとマンションなど、それぞれの良さを知る(写真はイメージ)【写真:写真AC】
購入と賃貸、戸建てとマンションなど、それぞれの良さを知る(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 不動産物件に対し、「家賃を払うくらいなら、ローンを払ったほうがいい」「資産価値として手元に残るんだから、買ったほうがいい」という購入派と、「経済事情に合わせて転居でき、身軽」「維持費や固定資産税などを払わなくて済むから、トータルで安い」という賃貸派。多くの人を悩ませる「購入と賃貸、どちらのメリットが大きいのか」に関する相談を不動産のプロ、東京・中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さんにお聞きしました。

 ◇ ◇ ◇

買いたい妻と借りたい夫 溝は深まるばかり

「家を買うのと借りるのでは、どちらが得なのか」は、長く続いている論争のひとつ。いずれも一長一短あるほか、各家庭によって異なるだけでなく、世の中の経済状況によっても左右されるため、なかなか“正解”が決められない問題です。

 今回、そんなテーマでの疑問を寄せてくれたのは、千葉県に住む30代女性。4年前に長男を出産し、以来、マイホームを熱望してきました。どんな相談内容なのでしょうか。

「『そろそろ家を建てたいね』と夫と話していたのですが、友人から『買うくらいなら借りたほうが絶対にいい!』と言われたようで、夫が感化されつつあります。

 マンションであれば借りてもいいと思うのですが、戸建てであれば自由にできる範囲が広がるはずです。それこそ庭でバーベキューとかもできるし、絶対に買ったほうがいいと思うのですが、その友人は頑なに『借りるべき!』と言って聞かず、夫も最近は『やっぱり賃貸でいいんじゃない?』と言い出し、こちらをイラつかせます。そもそも、戸建てを借りるメリットはあるのでしょうか?」

まずは住みたいと思う場所をピックアップ ファイナンシャルプランナーへの相談も

 気軽さや手軽さの面では賃貸が有利に見えますが、それは戸建てであっても同様なのでしょうか。姉帯さんは、総合的な判断が必要だと語ります。

「購入と賃貸、どっちがいいか? というのは、一概に言えません。部屋の広さや立地、収入、将来的に仕事が安定しているかなど、さまざまな面を比べてみないことにはわからないからです。

 まずは住みたいと思う場所をピックアップし、賃貸価格と購入価格をともに調べ、ファイナンシャルプランナーなどに相談してみてはいかがでしょうか。

 生涯家賃と購入費用を比べて安易に結論を出す方もいますが、家は買ったら終わりではなく、その後の修繕費用などの維持費が確実に必要になります。屋根のふき替え、壁の塗り替え、台所といった水回りの交換など、1回あたり数百万円の出費が必要なことが何度もあるでしょう。

 賃貸であれば、古くなった部屋から引っ越せばいいだけなので、そうした修繕費用を貯める必要はありません。また、収入や家族構成に合わせて部屋を移ることができるので、自由度の高さでは賃貸のほうが圧倒的に有利だといえるでしょう。

 とはいえ、買う・借りるは本人の価値観です。納得のいく家を買うのであれば、なんの問題もないと思います」

 そうアドバイスしたうえで、姉帯さんは今回のお悩みの背景について、議論すべきポイントがほかにあると指摘します。

「なぜ『戸建て』なのでしょうか? こだわる意味が、まったくもってわかりません。むしろマンションのほうが、値段が安く、公共交通に近い物件が多いと思うのですが……。また、近年建てられているマンションはバリアフリーのものが多く、将来的に便利であるといえます。

 お子さんがいたら庭がある戸建てのほうがいいという意見も聞きますが、密集した住宅地だと、外で遊ばせているだけで『騒音』認定されたり、ちょっと手入れをしないと苦情がきたり。ましてや庭でバーベキューなんて、よほどの田舎じゃない限り夢のまた夢です。

 購入か賃貸かという議論の前に、『マンションか戸建てか』の議論から始めてみてはいかがでしょうか」

(和栗 恵)

姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)

「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。