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賃貸物件を「又貸し」してはいけない理由 勝手なルームシェアが契約違反になる可能性も…
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教えてくれた人:姉帯 裕樹
自分が賃貸契約を結んでいる部屋を、親戚や友人など他人に貸し出す「又貸し」行為は許されるのでしょうか。仮に又貸ししても良い場合、どういった条件なら許されるのでしょう。東京中目黒コレカライフ不動産の姉帯裕樹さんに、お話を伺いました。
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又貸しは即時解約もあり得るNG行為
気に入った物件に長く住み続けたい人は多いでしょう。しかし、仕事の都合などで一時的に転居が必要になることも。戻ることが決まっていても、一度解約してしまうと同じ物件に入居できるとは限りません。
会社からの家賃補助などがある場合、家賃を払い続けて元の部屋の契約を維持する人もいます。ただし、二重に家賃を負担するのはなかなか大変です。そんなお悩みを寄せてくれたのは、大阪府在住の30代男性。どういった状況にあるのでしょうか。
「今、住んでいる部屋は最寄り駅まで近く、すぐそばにコンビニエンスストアやスーパーマーケットがあって、自分としては、このままずっと住み続けたいと思っています。
ただ、会社から2~3年の海外駐在を打診されているんですよ。でも、海外での家賃と日本での家賃、2つを払っていくのはどうにも厳しくて……。自分が出張に行っている間、友人に貸して住んでもらおうと思うんですが、それってありですか? なしですか?」
海外に滞在中の家賃に対し会社から補助は出るものの、その補助で借りることができるエリアは会社から車で1時間はかかる遠方ばかり。しかし、会社の近くのアパートを借りようと思うと高額な家賃を支払わねばならず、補助だけでは到底足りそうにないといいます。
そこで考えたのが、日本の部屋を維持するための家賃を友人に補填してもらうという方法。家賃から数万円ほど安い値段で友人に貸し、日本に置いておく趣味のアイテムなどの管理もお願いしたいと考えているようですが、そうしたことは可能なのでしょうか。
「ダメです!」
不動産のプロである姉帯さんは、はっきりとそう断言します。
「100%ダメです。契約書を読み直してみてください。『他人に又貸ししてはいけない』ということが書かれているはずです。
バレたら即時解約もあり得る重大な契約違反です。その部屋に住み続けたいというのであればなおさら、又貸しはやめたほうが良いでしょう」
家賃を支払っていれば問題ないのでは? と感じられる行為ですが、なぜ禁止されているのでしょうか。
「民法612条において『賃貸人の同意のない賃借権譲渡や転貸(又貸し)はできない』と定められていますし、国土交通省による『賃貸住宅標準契約書』にも、又貸しは禁止事項として記載されています。法律で決められていることなので、『法を守る』以外の選択肢はありません。
なぜここまで厳しく禁止されているのか、簡単に言うと、保障の問題になります。何かトラブルが起きたときに、貸主と借主との間で問題を解決することになるのですが、第三者に又貸ししていると問題が複雑化してしまい、貸主・借主ともに大きな痛手をこうむる可能性があるためです。
仲の良い友人だから大丈夫なんて思っていても、いざというとき相手に逃げられたらたまったものではありません。又貸しは、それくらいリスクが高い行為なんです。
ちなみに、勝手にルームシェアをした場合も又貸しとみなされ、契約違反になる可能性があります。勝手に民泊業を営む行為もNGですので、注意してください。
たまに勘違いしている人がいるのですが、家賃を払っていても、その部屋はあくまでもオーナーのものであり、借りている人が好き勝手にしていいものではありません。これだけは絶対に忘れないようにしてくださいね」
(和栗 恵)
姉帯 裕樹(あねたい・ひろき)
「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。