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失敗しない「ブリ大根」のコツ 栄養やおいしいブリの見分け方など 栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実
大根と一緒にしょうゆ味で煮た「ブリ大根」は、寒い季節にぴったりの日本の家庭料理です。しかし、自分で作るとなると大根に味が染み込まなかったり、ブリの生臭さが残ったり、パサパサ食感になってしまったりなど、うまくいかないケースもあるのではないでしょうか。失敗しないためのコツを、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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ブリの切り身は皮の色で違いが 脂がのっているのは白い皮
ブリは成長によって呼び名が変わることから「出世魚」と呼ばれ、立身出世の願いを込める縁起物として、お正月や端午の節句に食べる地域もあります。現在は養殖の技術が進み、夏にもおいしいものが流通していますが、本来は冬が旬の魚。寒い季節のブリは脂がのっているのが特徴です。
そんなブリを旬の大根と煮込んで作るブリ大根は、冬を代表する家庭料理といえるでしょう。ブリは、あらで作るのがおすすめですが、店頭で手に入らない場合は切り身でもかまいません。その際、ぜひ皮の色を見てください。ブリは皮の色で部位が異なり、黒い皮は背側、白い皮は腹側です。腹側のほうが、脂が多め。好みもありますが、脂分が多い白い皮のブリの切り身を選ぶと、ブリ大根がふっくらとした仕上がりになります。血合いは鮮やかな赤色のものが良く、身はツヤのあるピンク色のものが新鮮です。
ブリも大根も、調理前のひと手間が大事
ブリ大根をおいしく仕上げるためには、ブリも大根も調理前にひと手間かけることが大事。まずブリは、切り身なら食べやすい大きさにカットしたあと、ザルなどに入れて熱湯をかけます。表面が白くなればOKです。あらを使う場合は、塩を適量かけて約10分置き、切り身と同様に熱湯をかけてください。小さなことですが、ブリのぬめりが取れて生臭さも抑えられ、おいしいブリ大根になります。
大根も、いきなり煮るのではなくひと手間かけましょう。1~2センチの厚さに切ってから皮を厚めにむき、面取りをします。水の入った鍋に入れて火をつけ、沸騰したら弱火にし15分ほど下ゆでをしましょう。電子レンジで、やわらかくなる程度に加熱してもかまいません。面倒と思われがちですが、下ゆでをすることで大根の繊維が壊れ、調味料を加えたときに味が染みやすくなります。
こうしてブリも大根もひと手間かけてから、同じ鍋にいれてコトコトと中~弱火で煮込みましょう。煮物は、冷めるときに味が染み込んでいくといわれています。煮汁が半分になるまで煮詰まったら、いったん火を止めて、常温になるまで落ち着かせましょう。食べるときに好みの煮加減まで火を再度入れると、味が染み込み、生臭さやパサパサ感が気にならないおいしいブリ大根に仕上がります。
ブリは高カロリーも栄養価は高い
脂がのったブリは、ほかの魚と比べて高カロリーにはなりますが、脂はDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富。DHAは脳の活性化、EPAは動脈硬化などの生活習慣病の予防が期待されているので、摂取したい栄養素です。このほか、肝機能の強化などの働きが注目されているタウリン、糖質や脂質の代謝で補酵素として働くビタミンB1とB2、アルコール代謝の補酵素のナイアシン(ビタミンB群)も含まれています。
一方の大根も、腸内環境を整え、食後の血糖値やコレステロール上昇を抑える食物繊維や、余分な塩分を体外へ排出するカリウム、造血のビタミンといわれる葉酸などを含みます。ブリから流出した栄養成分がたっぷり染み込んだ大根は絶品。お酒の席が増えるこれからの季節にぴったりの料理です。カロリーや塩分、糖質などが気になる場合は、塩分や甘さ控えめを意識して調味料の量を加減したり、大根を多めに入れたりするなど工夫すると良いでしょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾