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数字にまつわる言い伝え 「三切れの漬け物は縁起が悪い」といわれるのはなぜ?

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

小皿にのった漬け物(写真はイメージ)【写真:写真AC】
小皿にのった漬け物(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 数字で語呂合わせや縁起担ぎをすることは、現代でもあります。ラッキーセブンの「7」が人気だったり、「4」は語呂合わせで「死」を連想することから避けられたり。「3」は「満つ」に通じて縁起が良いと古くから好まれる傾向にありますが、漬け物を「三切れ」だけ皿に盛るのは「縁起が悪い」と嫌がる人もいるようです。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、数字にまつわる言い伝えについて紹介します。

 ◇ ◇ ◇

割れない「奇数」は縁起が良い?

 日本では、「2」や「4」などの偶数は「割れる」数であることから、行事などに包むお金の金額として避けられる傾向にあります。たとえば、結婚式のご祝儀では、夫婦になるふたりの仲が割れて「別れる」ことを連想させるのが理由です。また、葬儀の香典でも、割り切れる偶数にすると「故人との縁が切れる」ことに通じるので良くないと考える人もいます。

 一方で、「1」や「3」「5」などの奇数は「割れない」ことから、縁起が良いと考えられることが多いようです。古来、奇数は「縁起の良い陽数」、偶数は「縁起の悪い陰数」との考えがあり、奇数が重なる日に邪気を払うなどの行事を催してきました。たとえば、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕など。これらの風習は現代も受け継がれています。

 なかでも「3」は縁起の良いものとして、古くから日本の暮らしに根づいてきた数字といえるでしょう。たとえば、語呂合わせで「満つ」に通じるとし、宴会の手締めの「三本締め」、三段重ねの盃で3回に分けて飲み干すお屠蘇などがあります。また「三日坊主」や「三度目の正直」「仏の顔も三度まで」など、「3」を区切りとして用いる言葉も多いです。

縁起が良い「3」 しかし「三切れ」は例外?

 現代も、和食店や寿司店などの入り口に布3枚の「三巾のれん」が飾られることが多いのも、「3」の縁起の良さにあやかったのが始まりとか。メニューでも、「二点盛り」や「おすすめ二種」よりは「三点盛り」や「おすすめ三種」のほうを多く見かけるのは、「3」の縁起や区切りの良さが好まれているといえるのかもしれません。

 しかし、この「3」という数字が「切れ」で使われると、意味が変わってくるようです。昔は、食事のときの漬け物を三切れにして小皿にのせて出すのはタブーとされていました。「三切れ」は「身切れ」に通じると考えられ、「三切れの漬け物は縁起が悪い」と言い伝えられるようになったようです。さらに、一切れは「人切れ」、四切れは「世切れ」に通じて嫌う傾向も。

 数字にまつわる言い伝えや迷信は語呂合わせが多く、その根拠は定かではありません。しかし、気にしないようにしていても、つい気になってしまうのが数字の不思議なところです。

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu