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「元日に掃除をしてはいけない」のはなぜ? 意外と多いお正月のタブーとは
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お正月は、家族や親戚が集まって新年の幸せを願い、祝う行事です。一方で「掃除をしてはいけない」など、お正月にはタブーとされることが意外に多くあります。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、「お正月にやってはいけない」言い伝えについて紹介します。
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お正月とは いつからいつまで?
お正月とは、料理や行事で新しい年の年神様を迎えて、五穀豊穣や家内安全などを願う期間です。年神様は、その年を司る神様のことで、各家庭に降臨し一年の幸せや健康など、福をもたらしてくれると考えられてきました。
1月1日は「元日」、とくに1月1日の朝を「元旦」と呼び、年神様を迎えてお正月が始まります。本来、お正月とは新年を迎える最初の月、つまり1月全体を意味しますが、現代だとお正月がいつまでなのかはさまざま。一般的には、元日から1月3日の三が日まで、または1月7日の松の内(地域によっては1月15日や20日)までをお正月とすることが多いでしょう。
元日は心静かに家族と過ごす日とされ、実際に行動するのは「事始め」の1月2日から。ただし、三が日までに「やってはいけない」と言い伝えられていることが、意外に多くあります。
元日や三が日のタブー 刃物やお金を使ってはいけない?
代表的なものに、「元日に掃除をしてはいけない」という言い伝えがあります。理由としては、年神様を迎えているのに掃除をすることは、年神様を追い払い、与えてくれた福まで払ってしまうことになると考えられたそうです。また、水を使っての掃除もタブー。年神様や福が流されてしまうといわれ、洗濯などの水仕事も縁起が悪いとされました。
このほか、元日や三が日のお正月に「やってはいけないこと」と伝えられているのは、次の通りです。
○煮炊きをしてはいけない
かまどなど、火を使うところには火の神様がいると考えられてきました。火の神様を休ませてあげるための風習といわれます。また、煮炊きをするとアクが出ます。このことが「悪を出す」に通じると考えられたとも。
○刃物を使ってはいけない
理由は「包丁で切ることは、縁を切ることにつながる」や「お正月くらいは包丁も休ませてあげよう」など諸説あります。「爪を切ってはいけない」とする地域もあるようです。
○裁縫をしてはいけない
ほころびやほつれを繕うなど、ちょっとした裁縫もやってはいけないとされました。福を与えてくれる年神様に、針でけがをさせないようにとの思いもあったようです。
○お金を使ってはいけない
お年玉や賽銭などは別として、「年の初めにお金をたくさん使うと、その一年はお金が貯まらない」との言い伝えがあります。
○けんかをしてはいけない
良い一年になるよう願うお正月に争いなどをしたら、福どころか新年早々、悪い運の流れを作ってしまうという考えから。
「やってはいけない」ことをやったからといって、何か良くないことが起こるという科学的根拠はありません。もともとお正月は、料理や掃除、裁縫といった日常の仕事はせず、ゆっくり休むようにと考えられていました。休むために、「やってはいけないこと」として言い伝えられるようになったのかもしれません。また、正月早々に争ったり、浪費したりといったことが起こらないようにとの戒めもあったのでしょう。
(鶴丸 和子)
鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
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