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多胎育児の壮絶な実態 一日にオムツ替えは28回、授乳は18回…「気絶している状態が睡眠時間でした」
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厚生労働省「人口動態統計」によると、双子、またはそれ以上の複産(多胎児出生)割合は1980年代後半より増加傾向にある。現在では、毎年およそ100人に1人の妊婦が双子以上の多胎児の母親になっており、2010年以降、複産の年間出生数は1万件前後を横ばいに推移。先日、双子をベビーカーに乗せた女性が市営バスから乗車拒否されたとの声が話題になったが、双子以上を育てる親の実態に今、関心が集まっている。増加を続ける多胎家庭、全国1591世帯に対し、NPO法人フローレンスがアンケート調査を行った結果、多胎育児の壮絶さが明らかとなった。
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外出困難、周囲の無理解、多胎児保護者の苦悩が浮き彫りに
双子以上を育てる親の実態に関心が集まっている。愛知県豊田市で昨年1月、三つ子の母親が次男を虐待死させた事件が発生したことも記憶に新しい。
NPO法人フローレンスが多胎家庭を対象に行ったアンケートでも、多胎育児中に「辛い」と感じた場面で一番多かったのが、「外出・移動が困難なとき」だ。実に89.1%と約9割が苦痛に感じていることがわかる。「ふたりが同時に泣くかもしれないと思うと不安で公共交通機関を利用できない」「準備段階からとにかく大変。ひとりの準備をしてももうひとりを準備している間に泣いたりどこかへ行こうとしたり、結果引きこもってしまう」といった声が聞こえてきたという。
さらに「自身の睡眠不足・体調不良時」と「自分の時間がとれないとき」が同率で77.3%で続き、「大変さが周囲に理解されないとき」が49.4%と、孤立感を感じていると思われる家庭も5割近くという結果になった。
「双子が交互に寝たり起きたりしている時期は、いつ寝たらいいのか分からず、気絶している状態が睡眠時間でした」「一緒に子育て終われていいね、と言われる。一度にふたり分降りかかってくるから大変なのに」など、物理的に厳しい状況や周囲との認識のギャップに悩む声も多く、その壮絶さがうかがえる。
現行サービスは多胎児向きではない育児サポート見直しの必要性
また、NPO法人フローレンスは多胎家庭の実態を調査。ある双子を育てる家庭では、生後0か月の双子の育児を日記から振り返ったところ、一日にオムツ替えは28回、授乳は18回にも及んだという。また、沐浴も人数分のため、主たる養育者の休息時間が細切れになってしまっている様子が見て取れたそうだ。
「どのようなサポートがあれば気持ちが和らぐか?」という具体的に必要な手助けに関する質問に対し、「家事育児の人手」が68%、「金銭的援助」57%、「子を預ける場所」52%となった。
しかし、現行の育児補助サービスは単胎家庭向けになっており、また保育入園の基準となる「保育を必要とする事由」には、「多胎育児中であること」は含まれていないという。多胎家庭が一時保育やファミリーサポートなどといった育児補助を受けにくく、孤立してしまうケースも見受けられるそうだ。
少子化が進む一方にもかかわらず、孤立しがちな多胎家庭を取り巻く環境はなかなか変化がないように見える。社会全体で子育て家庭に目を向け、すべての子ども達が笑顔あふれる生活を送れるようサポートしていける社会を目指していきたい。
(Hint-Pot編集部)