仕事・人生
3児のママが毎朝手作りするジビエ肉を使った餃子 無人自動販売所に込めた思いとは
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出産後に心に不調をきたし、家族と一緒に淡路島へと移住した大阪出身の森田悠香さん。大好きな海をめぐるうちに、たどり着いたのが淡路島の海でした。淡路島で過ごすうちに少しずつ前を向けるようになり、夫や友人たちと一緒に、地元野菜やジビエ肉を使った餃子の無人販売所「島ぎょうざ はるちゃん」をオープン。今では現地の人からも愛される人気店になっています。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。後編では、「島ぎょうざ はるちゃん」の立ち上げの経緯や今後の夢について話を伺いました。
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「島ぎょうざ はるちゃん」の由来 自分の名前が店名に
専業主婦だった母の姿を見て育った森田さん。大人になったら自分も専業主婦になって、子どもと24時間一緒にいたいと思っていたといいます。願いどおり、3人の子どもの母として、「とても幸せだった」と振り返る日々。しかし、「幸せなはずなのに、なんか悲しい」と、社会からの孤独を感じ、沈んだ気持ちになることが多くなったといいます。
気分を落ち着けるため、週末に家族で海をめぐっているうちに、淡路島を訪れるようになり、移住を決意。自然あふれる島の生活で次第に芽生えていったのは、「子どものお母さんや夫の妻ではなく、“森田悠香”というひとりの人間として社会に出たい」という気持ちでした。
そんな折、夫や仲間たちと一緒に考えていた自動販売所の餃子店をついにスタートさせることになりました。
「もともとは別の人が前面に立って餃子店を切り盛りする予定だったんですが、急きょ難しくなってしまいまして……。夫から軽いノリで、『ほんなら、はるがちょっとやってみるか?』って言われて。ちょうど自分がどれだけやれるのかを試したい、という思いがあったので、気がついたら『やる!』と答えていました」
店の名も、「島ぎょうざ はるちゃん」に決定。森田さんの名前からつけられました。
「島ぎょうざ はるちゃん」の売りは、地元で獲れたジビエ肉を使用していること。淡路島では近年、ニホンジカやイノシシによる農作物の害獣被害が増えており、困っている農業従事者が多いといいます。そこで、この課題をうまく解決しながら、命を大切にいただくことができないかと考え、害獣として駆除された肉を餃子に還元することになりました。
1年後にはハンバーグとBBQ用のジビエ肉を商品化
現在は森田さんの夫と、夫の友人夫妻と一緒にひとつのチームとして「島ぎょうざ はるちゃん」を運営しています。淡路島で獲れた質の良いジビエ肉を地元業者から仕入れ、森田さん自身が毎朝、餃子のタネを調理。新鮮な肉をすぐに処理しているため、臭みはほとんどないのだとか。
「臭みがないといっても、ちょっとはあるんじゃないかと、思われている方が多いようですが、実際に食べていただくと、『え? こんなにジビエって食べやすかった?』と驚かれることが多いんです。もちろん食べやすいように味に工夫はしていますけどね」
スタートから1年経った2022年、1周年記念として「餃子以外の何か特別なものを提供したい」と思った森田さんたちは、新商品としてジビエ肉を使ったハンバーグを作ることに。1周年記念のパーティーで、集まってくれた常連客に提供したところ、とても評判だったことから商品化することになったといいます。
「皆さんから『おいしい』『これはもう商品化したほうがいい』って言っていただいたので、ハンバーグはそのまま商品化して、さらにジビエ肉そのもののおいしさも味わっていただきたいという思いからBBQ用のイノシシ肉も販売することにしました」
その反響は思っていた以上に大きく、ECサイトやふるさと納税では販売するとすぐに売り切れになってしまうのだとか。
「『イノシシの肉ってこんなにおいしかったんですね』と言ってくださるお客様もいますし、なかには、思いのほかサイクルの早いリピーターの方もいらっしゃいます。本当に評判も良く、手応えを感じています」