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冬のホウレン草はいいことだらけ? ビタミンCは夏の3倍、甘みもアップ…意外と知らない栄養価の違い
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教えてくれた人:和漢 歩実
ホウレン草は、“緑黄色野菜の王様”といわれるほど、栄養豊富な野菜として知られています。年中店頭に並びますが、ホウレン草の本来の旬は冬。しかも夏のホウレン草と比べると甘みが強く、栄養価が高いそうです。ホウレン草について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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ホウレン草は「霜にあたると甘みが増す」
おひたしにしたり、炒め物にしたり、さまざまな料理に活用されるホウレン草。現代は季節を問わず店頭に並んでいるので旬がいつか意識しにくいかもしれませんが、本来の旬は冬。とくに寒い季節のホウレン草は、甘みが強い特徴があります。
「霜にあたるとホウレン草は甘みが増しておいしくなる」といわれますが、これは植物の耐寒性質によるもので、寒さで凍らないように糖分を蓄えるため。冬のホウレン草は地温が低下するため代謝も少なくなり、独特のえぐみも減少してやわらかな味わいになるともいわれています。
栄養価で比較すると、冬のホウレン草は夏のホウレン草よりビタミンC量が多いことでも知られています。日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、100グラム(生)あたりのビタミンCの量が、「夏採り」が20ミリグラムに対し、「冬採り」は60ミリグラム。3倍も違いがあります。
ホウレン草の代表的な栄養とは
ホウレン草に含まれる代表的な栄養といえば、βカロテンです。必要時に体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を強くしてウイルスなどの侵入を防ぐことで知られています。風邪が気になる寒い季節に摂取しておきたい栄養素です。
また葉酸は、ホウレン草から発見されたビタミンB群のひとつ。DNAの合成や造血作用が期待されるので、出産予定の女性が積極的に摂りたい栄養素といえるでしょう。このほか、鉄、カリウム、カルシウムなどのミネラル、食物繊維が豊富です。
ホウレン草の根元の赤い部分も、ぜひ食べたい部分です。抗酸化作用が期待されるポリフェノールや骨の形成に必要なマンガンが含まれています。十字に切り込みを入れてしっかり汚れや土を洗い落とし、調理しましょう。
ホウレン草の「アク抜き」は炒め物でも忘れずに
「ホウレン草の生食は避けた方が良い」といわれる理由は、アクと呼ばれるシュウ酸を含むためです。シュウ酸は、結石の原因とも。そこで調理前には「アク抜き」が必要になります。
アク抜きとは、下ゆでともいいますが、沸騰した湯に塩を入れて1~2分ゆでて、水にさらすことです。そうすることで、ほとんどのシュウ酸が流出します。ホウレン草は切らずに下ゆでしたほうが、ほかの栄養の損失が防げるでしょう。現在はさまざまな品種があり、生食できるものや、アクが少ないものもありますが、基本的に調理前のホウレン草のアク抜きは忘れずに行いましょう。
電子レンジで加熱調理するのも時短という点では良いですが、シュウ酸の除去を考えると、加熱後に水にさらすなどしてアク抜きをするほうが良いでしょう。炒めるときも、アク抜きをしてからの調理をおすすめします。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾