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体脂肪の低減や抗インフルエンザウイルス活性など カテキンの可能性について研究者に聞いた
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日本人の生活に広く根づいている緑茶。急須を使うことが減っても、ペットボトルの緑茶飲料が増え、世代を問わず親しまれている飲み物のひとつです。一方で、何気なく飲んでいるからこそ、体に良いイメージはあっても“意外と知らない”ことも。健康に良いとされる緑茶に含まれるカテキンについて、どんな特徴や期待されるポイントがあるのか、ヘルシアも手掛けた花王の茶カテキン研究者の方に話を聞きました。
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緑茶のカテキンとは? さまざまな作用が研究で明らかに
緑茶には、体に良い成分が含まれるといわれています。なかでもカテキンは広く知られており、ペットボトルの緑茶飲料では“540ミリグラムの茶カテキンが含まれている”など、その含有量が記載されるほど。しかし、実際には緑茶のカテキンがどういうもので、どう健康に良いのか、意外に知らないこともあります。
「茶カテキンは、とくに緑茶の中に多く含まれているポリフェノールの一種です。茶葉を急須で淹れた場合、湯のみ1杯 (120ミリリットル) に80ミリグラムほどの茶カテキンが含まれています」と話すのは、農学博士で花王株式会社 ヒューマンヘルスケア研究所 第5研究室長の日比壮信さんです。
以前から、ポリフェノールの一種である茶カテキンについては、多くの研究がされていると日比さんは話します。
「近年のさまざまな研究から、茶カテキンには抗酸化作用だけでなく、殺菌作用、抗ガン作用、高血圧低下作用、血糖値上昇抑制作用などの数多くの生理作用があることが明らかになってきています」
脂肪の消費にも期待
さらに注目したいのは、多くの人が気になるポイント、脂肪の消費や体脂肪の低減です。茶カテキンに期待される要素としては、どんな研究報告があるのでしょうか。
「茶カテキンには多くの生理作用があるなかでも、脂肪の消費や分解を促すことが知られています。茶カテキンを摂取することで、エネルギーとしての脂肪消費が増加し、体脂肪の低減につながることが報告されています」
実験では、茶カテキンを豊富に含む緑茶飲料を長期間ヒトが摂取した場合と、茶カテキンを含まないコントロール飲料を摂取した群とを比較しました。茶カテキンの継続摂取により、体重やBMI、腹部全脂肪及び内臓脂肪が有意に低減することが報告されています」
さらに日比さんは、実験の方法や、茶カテキンによって体脂肪が低減する仕組みを教えてくれました。
「呼気に含まれるガス成分を検査する、呼気分析試験を行いました。体脂肪低減のメカニズムとして、茶カテキンを豊富に含む緑茶飲料を継続的に摂取することにより、食事由来の脂質の消費量が高まり、また、軽い運動と茶カテキンを豊富に含む緑茶飲料を併用することで、身体活動時の脂質消費量が増加することが確認されています」
流行中のインフルエンザ 茶カテキンはどう作用する?
流行中のインフルエンザに、茶カテキンは有効なのでしょうか? ウイルスへの作用について解説してくれたのは、医学博士で花王株式会社 ヒューマンヘルスケア研究所ヘルスケアDXプロジェクト 特定テーマリーダーの大里直樹さんです。
「体の中に入ってきたインフルエンザウイルスは、細胞の表面にあるレセプターに結合することを起点に、体内に侵入します。体内に侵入したウイルスは、体内で増殖することで、感染症を引き起こすのです。
茶抽出物に、抗インフルエンザウイルス活性――インフルエンザウイルスが活性化するのを抑える性質があることは、1949年に最初に報告されました。さらに、1993年にカテキンとインフルエンザウイルスを事前に作用させておくと、感染が阻害されることが報告されています」
かなり以前から茶カテキンは、ウイルスなどが体内で活性化するのを防ぐ点で、注目されてきました。そうした研究結果を背景に、インフルエンザウイルス以外への作用についても、研究が進められていると大里さんは語ります。
「茶カテキンによるインフルエンザ感染の抑制効果がすでに明らかになっていたので、奈良県立医科大学では、茶カテキンと新型コロナウイルスの研究を実施し、カテキンが新型コロナウイルスを不活化することを見出してきました。
天然型カテキンであるEGCG(エピガロカテキンガレート)とECG(エピカテキンガレート)、非天然型カテキンであるCG(カテキンガレート)の3種において、ウイルスの減少効果が認められています」
そのほかにも抗菌・殺菌作用やアレルギー抑制作用など、いろんな面で効果が期待され、さまざまな機関で多くの研究が進行しているそうです。
喉を潤したり、ちょっと一息ついたり、意識せずに飲んでいますが、体にもうれしい緑茶。これからも積極的に、おいしく楽しみたいですね。
※記事の内容は取材時の情報に基づいたものです。インタビュー中のカテキンの作用はカテキンの研究結果であり、特定の商品の機能を示すものではありません。
(Hint-Pot編集部)