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日本人よりも日本人のように振舞った元外国人プロ野球選手 京都で体験した日本のこころとは
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“助っ人”として来日したプロ野球選手の中にも、日本を愛し、理解を深めたいと感じている人は少なくありません。2015年から通訳として多くの外国人選手たちをサポートしてきた、埼玉西武ライオンズの町田義憲さんには、そうした姿勢がとても印象に残っている選手がいるそうです。訪日外国人観光客にも人気の京都へ、旅行したときのエピソードを聞いて驚いたといいます。いったいどのように京都を満喫したのでしょうか。お話を伺いました。
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京都で着物を着用したエンス投手 スタイルの良さが写真映え
町田通訳によると、米国人のディートリック・エンス投手(2022年から2シーズン活躍)は、ライオンズで活躍した多くの外国人選手たちのなかでも、とくに日本を満喫したい思いが強かったようです。球団通訳の仕事は言語面だけでなく、選手の家族を含めて生活に関する全般のサポートを行います。旅行や誕生日祝いの手配を代わりに行うことも少なくありません。しかし、エンス投手と家族は旅のプランを練るのも楽しんでいたようです。
「『ホテルを予約してほしい』とか『チケットの手配をしてほしい』といったリクエストを出してくる選手が多い中、エンス投手からは一切ありませんでした。どうやらエンス投手の奥さんはいろいろと調べることが好きで、行きたいところややりたいことを調べて、自分自身でリストアップしていたようです。エンス投手からは旅行から帰ってきてから『行ってきたよ』と報告を受けていました」
旅行中の写真を見せてもらうこともしばしば。町田通訳は、エンス投手夫妻が京都で体験したという着物姿の写真も目にしたことがあるそうです。
「エンス投手の身長は185センチぐらいありますし、外国人って日本人よりもスタイルがいいので、着物もやっぱり似合うんですよね。ふたりともとても写真映えしていました」
ちなみにエンス投手は紺色系、奥様は白をベースに紫の差し色が入った落ち着いた感じの着物だったそうです。
「郷に入っては郷に従え」 茶道だけでなく正座も体験
また、「茶道体験」に行ったことも教えてもらったそう。茶道体験には、茶室で先生のお点前を拝見し和菓子と抹茶をいただくお茶会タイプと、自身で抹茶を点てていただくご自服タイプがあります。エンス投手が体験したのは後者でした。
普段から「郷に入っては郷に従え」を実践してエンス投手は、「日本人のマナーから外れることはしたくない」と考えており、「おそらく茶室では、日本人よりも日本人のように振舞っていたと思います」と町田通訳。しかし、そんなエンス選手に大きな障害が立ちはだかりました。それは正座。
「できる限り頑張っていたみたいですが、正座は相当につらかったようで……。最初はちゃんと正座していましたが、途中で足を崩したと言っていました。不慣れな外国人にとっては、長時間の正座はとてもつらいですよね」
ちなみに、抹茶のお味は「苦味はあったけど、おいしかったよ」と言っていたそう。好みでなければ口にすることはしないという選手が多い中で、エンス投手の人柄がにじみ出ているエピソードです。
チームメイトと積極的にコミュニケーションを取り、日本語を教わる姿などが話題になったこともあるエンス投手。プライベートでも日本の文化を学び、楽しんでいたようです。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)