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「日本円やカードも持たず」にタクシー乗車 現役タクシードライバーが明かす外国人観光客増の影響とは

公開日:  /  更新日:

著者:日下 千帆

チップをくれる乗客や外国通貨で支払おうとする乗客も

2014年からタクシードライバーを務める山田さん【写真:日下千帆】
2014年からタクシードライバーを務める山田さん【写真:日下千帆】

――インバウンド客の行動で、最近の傾向はありますか?

「配車アプリを使って乗る人が増えましたね。ウーバー感覚なのではないかと思います。目の前にタクシー乗り場があるのに、わざわざアプリを使って呼んでくる。行き先もあらかじめ設定してあり、アプリでのオンライン決済がほとんどです。迎車代500円がかかるのですが、それでも日本語で会話しなくてよい気楽さと、キャッシュレスで支払いが楽なほうをとるのでしょうね」

――チップが払われることもあるのでは?

「ありますね。ホテルから成田空港まで2組のカップルを乗せたときに、2万8000円だったのですが、それぞれのカードから1万5000円ずつと言われ、『ノー』と言ったら、『あなたのチップ込みでね』と言ってくれました。

 また、これはたまたまかも知れませんが、オーストラリアからのお客様は気前もノリもいいように感じます。チップも弾んでくれるし、オーストラリアの有名ミュージシャンの曲を歌うと、ちゃんと受けてその続きを歌ってくれたりしましたね。『ハブ ア グッド ダイ(Have a good day)』なんてオーストラリア訛りを真似するとゲラゲラ笑ってくれたり」

――インバウンドのお客様が増えて困ったことはありますか?

「渋谷のスクランブル交差点、六本木のロアビル前やけやき坂などの横断歩道で自撮りをしている方をよく見かけますが、信号が赤に変わっても撮影し続けているのは困りますね。危険ですし、車が動けず渋滞しそうになります。

 そのほかにも、ときどき日本円もカードも持たず、ドルや元でお支払いしてくるお客様もいます。行き先が空港なら両替してもらうのですが、両替できない場所だと困りますね……。仕方ないので、最近ではネットでレートを調べて、両替手数料を乗せた金額でお支払いいただくこともあります」

 これから暖かくなるにつれ桜の季節を迎えると、さらなるインバウンドの増加が見込まれます。それに対応すべく都内のタクシードライバーは、外国人観光客とのスムーズなコミュニケーションのため、英語や中国語など、外国語の勉強に日頃から励んでいます。

 そんな彼らの細かな気づかいや丁寧な言葉遣いなど、ホスピタリティの高さに驚く外国人も多いといいます。日本での快適な旅を楽しんでほしいですね。

(日下 千帆)

日下 千帆(くさか・ちほ)

1968年、東京都生まれ。成蹊大学法学部政治学科を卒業後、テレビ朝日入社。編成局アナウンス部に配属され、報道、情報、スポーツ、バラエティとすべてのジャンルの番組を担当。1997年の退社後は、フリーアナウンサーとして、番組のキャスター、イベント司会、ナレーターのほか、企業研修講師として活躍中。