受験や商談など勝負ごとがある前のゲン担ぎといえば、「カツを食べる」ことを思い浮かべる人は多いでしょう。食べ物に限らず、昔から語呂合わせや特徴で「縁起が良い」と考えられてきたものは多くあります。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、勝負ごとで縁起が良いとされる「生き物」についてです。持ち物や贈り物のモチーフの参考にいかがでしょうか。

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古くから盛ん　勝負ごとにまつわるゲン担ぎ

　ここぞというときの大勝負で、自分の力を最大限に発揮し、良い結果を出したいという思いは、今も昔も同じです。日本では、勝負ごとでうまくいくように願いを込めて縁起を担ぐ「ゲン担ぎ」が古くから盛んに行われていました。

　たとえば、戦国時代には、出陣前に「打ち、勝ち、喜ぶ」の願いを込めて、「打ちアワビ、勝ち栗、昆布」を「三献の儀」として酒の肴に供したといわれています。現代でも、商談が「流れない」ように水曜日を定休にする業界があったり、“勝負飯”といわれるものが注目を集めたり。勝負ごとにまつわるゲン担ぎはさまざまです。

「縁起が良い」といわれる生き物を、着物や持ち物の柄、小物のモチーフなどに用いてきた風習もあります。どのような理由でゲンを担いできたのでしょうか。勝負ごとにまつわる縁起物の動物や鳥、虫などを紹介しましょう。

馬は“うま”くいく？　勝負ごとに縁起の良い動物

○馬

　古来、馬は神様の乗り物と信じられてきました。戦に欠かせない存在でもあり、勝利をもたらす縁起物です。「馬九行久」や「馬九行駆」など「うまくいく」の語呂合わせで9頭の馬が描かれることもあります。

○狸（タヌキ）

「たぬき」は「他抜き」で「他者を抜く」ことに通じることから、勝負ごとに縁起が良いと考えられてきました。お店の軒先や庭先で見かける信楽焼の置物も縁起物として知られています。