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「いっぱい失敗したんです」 編集長が語る「地球の歩き方」マイナス95%から復活までの道のり
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「やりきったのか? 自問自答」 協力会社とともに乗り切った危機
出版業界に限らず、それまで続けてきたビジネスが低迷すると、別ジャンルに手を伸ばそうとするのはよくあることです。うまくいって業績を回復するケースもありますが、失敗して傷口を広げてしまう例も少なくありません。
「地球の歩き方」は危機的状況の中、旅行ガイドの棚で勝負すると決断し、ヒットを飛ばすことにつながりました。しかし、違う道を模索し続ける選択肢もあったはずで、新たな道を探し続ける企業も多いです。この“軸足を決められた”差は、どこにあるのでしょうか。
「本当にやりきったのか? というのを自問自答し、確認することが重要だと思いますね。コロナ禍のタイミングで“選択と集中”を決断できた背景には、失敗したことも含めてチャレンジできることを“やりきった”と言えたからじゃないでしょうか」
そう話した宮田さんは、原点に立ち返り「旅行ガイドの棚で勝負する」と決めた当時の資料を見せてくれました。新たな企画募集のための資料で、これまで旅行ガイドを作ってきたノウハウを生かし、短期・中期・長期に分けて考えられる書籍の方向性が示されています。
「編集部には編集プロダクションさんをはじめ、多くの協力会社があります。長年、一緒にやってきている30年40年のキャリアのスタッフさんもたくさんいて、そういう方たちの仕事をなくしてはいけない。そこで『海外旅行のガイドブックしか作ったことない』プロに、これまで積み重ねた経験を生かした企画というお題を出しました。
今、シリーズ化されている『旅の図鑑』の企画も、こうしたお題を通じて形にできたもののひとつ。大変な状況はありましたけど、そうやって協力会社さんも一社も潰れることなく、乗り切ることができたんです」
SNSの時代に「旅行ガイド」を作り続ける意義と「発信」の必要性
コロナ禍の以前にも「地球の歩き方」には、ピンチがありました。それは、スマートフォンの登場。旅行者はガイドブックに頼らなくても、SNSなどを通じて現地の情報が手に入るようになりました。しかし、当時は取材のしやすさ、情報収集のビッグチャンスと捉えたといいます。
ただ、インターネットで情報収集する層には、お金を払って旅行ガイドを購入する意味を見出せない人もいるはず。旅行ガイドの代名詞といえる「地球の歩き方」ですが、そういった“ガイドブックを利用する選択肢を持たない”タイプの人の間では、ブランド自体が認知されません。
実は、ドラマ「地球の歩き方」で韓国編に主演した三吉彩花さんは、作品に参加することになるまで「地球の歩き方」の存在を知らなかったそう。
「お若い頃から仕事をされていて、海外へもアテンドがあって行くことが多い方なので、ご存じない事情もあります。でも、我々の発信力のなさといいますか、発信する努力をしてなかったことを反省しましたね。声高に言うつもりはないですが、旅の計画をする際に検索だけで情報を探すよりも、ガイドブックなどである程度、目星をつけてから調べるほうが早く情報を見つけられるというデータが取れています。
実際の利用者のなかには、旅先ではガイドブックをホテルに置いておいて持ち歩かない人も。路線図や地図をスクショしたり写真に撮って画像化したりして、スマホで活用している人も多いそうです。また、紙のガイドブックは、見知らぬ街でWi-Fiがつながらなくても、スマホの充電が切れても見ることができます。だから旅行ガイドを“旅のお守り”みたいに、思ってもらえるようになるといいですね」
さまざま紆余曲折を経てV字回復した経緯や、旅行ガイドを作り続ける思いを語ってくれた宮田さん。「発信力のなさ、発信する努力の足りなさ」についても、まだまだ話は尽きません。
次回は、「旅行ガイドの棚の中で戦う」と決めたことで復活を遂げた「地球の歩き方」が、ドラマ化を含めて書店からも完全に飛び出し、広がっているコラボ対応について、詳しくお聞きします。
原案:「地球の歩き方」(株式会社地球の歩き方)
出演:三吉彩花、森山未來、松本まりか、森山直太朗(出演順)
放送日時:BSテレ東 毎週土曜深夜 24:00~24:30、テレビ大阪 毎週土曜深夜 24:55~1:25
配信:Leminoにて1週間独占先行配信、広告付き無料配信サービス「TVer」にて見逃し配信
制作:テレビ大阪/テレコムスタッフ 製作著作:ドラマ「地球の歩き方」製作委員会
(Hint-Pot編集部・鍬田 美穂)