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カキの「生食用」と「加熱用」 違いは鮮度ではない 注意すべき点を栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実
カキがおいしい季節です。家庭でカキ鍋を作る機会もあるでしょう。スーパーマーケットで販売されているカキのむき身のパックには「生食用」と「加熱用」がありますが、鍋料理など加熱して食べる場合にも、新鮮なイメージがある生食用を選んだほうが良いのか迷うことがあります。カキの「生食用」と「加熱用」の違いは何なのでしょうか。栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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カキの「生食用」と「加熱用」 鮮度の差は誤解
店頭で見かける「生食用」のカキのほうが、「加熱用」よりも「生で食べられるから新鮮」とイメージする人が多いかもしれません。しかし実際には、販売されている生食用も加熱用も新鮮であることに違いはなく、鮮度によって区分されているのではありません。「鮮度がいいから生で、鮮度が落ちたから加熱で」ではないのです。
では、生食用と加熱用を何によって区分されるかというと、カキが育った「海域」によります。大きく分けると、細菌やウイルスの水質基準をクリアした指定海域で獲れて洗浄されたカキが生食用、それ以外の海域で獲れたカキが加熱用です。指定海域を設けていない地域の場合は、浄化処理後のカキが「生食用の規格基準」に適合しているかどうかで判断されます。
カキは、水中のプランクトンを食べて育ちますが、細菌やウイルスが内臓に蓄積しやすく、これらの微生物の中には食中毒を引き起こすものもあります。したがって、生で食べるカキには、これらの微生物がないようにしなくてはいけません。
生食用として販売されるカキは、菌が少ない海域で採取されたものであるか、採取後に清浄な水の中に一定時間入れて菌などを排出する浄化処理を行っているかなど、食品衛生法によって定められた規格基準を満たす必要があります。採取海域、微生物の基準、加工時の衛生管理、保存温度などの規格基準を満たさないものについては、「加熱用」として食べる前に十分に火を通す必要があることを明確に表示する必要があります。
カキのうま味を感じられるのは生食用? 加熱用?
鍋料理や炊き込みごはんなど加熱する料理に、生食用のカキを使ったらいけないということはありません。しかし、加熱用のカキは、生食用としての浄化処理などがない分、味が濃いといわれています。加熱調理で用いるのならば、加熱用のカキを使ったほうが、カキ本来のうま味が引き立つ仕上がりになるでしょう。
加熱用カキは、十分に火を通してから食べましょう。寒い季節のカキの食中毒で圧倒的に多いのは、ノロウイルスが原因によるものです。ノロウイルスは中心部温度が85~90度で90秒以上加熱すると死滅するとされています。生では絶対に食べないでください。調理の際は、カキを触った手でキッチン用品やほかの食品を扱わないようにするのも大切です。手をよく洗いましょう。
カキは、栄養価が高いことで知られています。たんぱく質や脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの五大栄養素を、牛乳のようにバランス良く含み、乳白色をした身の色から「海のミルク」と呼ばれます。ミネラルでは体作りに欠かせない亜鉛や鉄、また肝機能を高めることで有名なタウリンなども含みます。鍋やスープ料理であれば、汁まで飲むのでカキの栄養をたっぷりといただけますよ。
(Hint-Pot編集部)