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知れば安心! 食中毒予防のコツ 火の通りを良くする小技や冷蔵庫内の適正量
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教えてくれた人:池田 由美
6月になり、ジメジメと暑い日が増えてきました。梅雨から夏にかけて発生しやすい食中毒。毎日食べている家庭の食事でも発生する危険があります。特に外出を控えて自炊する機会も多い今、すぐにできる「食中毒予防」のコツについて、栄養士で家庭科教員の池田由美さんに聞きました。
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肉や卵はしっかりと熱を通すことがコツ 煮込み料理は混ぜて鍋底に空気を送る
――これから気を付けたい食中毒は、どんなものがあるのでしょうか?
「梅雨から夏にかけて発生しやすいものは次の4つです。まず、『O-157』 として知られる『腸管出血性大腸菌』が挙げられます。生レバーやユッケなどの生肉、ローストビーフなどの生に近い状態のものから感染することが多いです。抵抗力の弱い子どもや高齢者は特に注意が必要です。その他、特に鶏肉から感染することが多い『カンピロバクター』、鶏肉や卵から感染することが多い『サルモネラ菌』、カレーやシチューなどの煮込み料理に多い『ウェルシュ菌』です」
――防ぐコツはありますか?
「お肉なら中心部が75℃以上の状態で、1分以上加熱することで死滅します。なので、調理ではしっかりと中心部まで火を通すことが必要です。この時期に親子丼や卵丼などを家庭で作る場合は、食中毒の予防という観点からはトロトロの半熟よりも、しっかりと卵にも火を通したほうがよいでしょう。また、から揚げなど厚みのある鶏肉を調理する場合には、予めフォークなどで穴をあけ火の通りを良くするのもコツの1つです」
――カレーなど煮込み料理は、長時間、加熱するので火が通って菌が死滅しそうですが……。
「『ウェルシュ菌』は、土や水の中、健康な人や動物の腸内など、自然界に幅広く生息している細菌で、特に牛、鶏、豚などの食肉が保菌していることが多く、注意が必要です。“芽胞”を一度作ってしまうと、通常の加熱では死滅しません。100℃、6時間の加熱にも耐え得ると言われています。空気がないところを好むので、カレーの鍋底などは格好の増殖場所となります。調理中はよくかき混ぜ、鍋底にも空気を送りながら加熱するのが大切です。また、完成したら鍋を長時間そのまま室温で放置しないこと。カレーは完成したら鍋ごと急冷するかまたは粗熱を取ってから、小分けにして冷蔵庫に保存しましょう。食べる時は十分に加熱して下さい」
調理の順番は生で食べるものを先に 頻繁に触る水栓の取っ手は湯で除菌
――冷蔵庫に入れてしまえば菌が繁殖しない印象があります。
「一般的に細菌が増殖しやすい温度が20~40℃、10℃以下で増殖は抑制され、5℃以下では発育が阻止できると言われています。JIS規格により冷蔵庫は0~10℃、冷凍庫はマイナス12℃以下に設定されています。しかし、特に室温が高い場合や頻繁に開閉を繰り返す場合、庫内温度を10℃以下に保つことは難しいため、決して過信してはいけません。それから冷蔵庫の詰めすぎも注意が必要です。適正な温度で保存ができません。庫内の保存は7割くらい3割ほどスペースを空けるのがベストです」
――その他、家庭での食中毒を防ぐために気を付けたいことはありますか?
「まず、調理の順番を考えましょう。サラダなど生で食べるものを先に調理し、肉や魚など食中毒が心配なものは後から調理します。生肉や鮮魚は食中毒菌が付いている場合が多いので、扱う時はちょっとした工夫をしてみてはいかがでしょうか。例えばまな板を使い分けるなどです。1枚のまな板であれば、両面を使い分けます。また調理器具を別にしたり、触った手で他の食材に触れないように気を付けましょう」
――調理器具などの後片付けも大切ですね。
「菌やウイルスは目に見えないため、流水だけで洗ったつもり、あるいは洗ったと勘違いしてしまうこともあります。使った調理器具は、速やかに洗剤を使ってよく洗うことが大切です。この時、器具の柄を洗うことも忘れずに。最後に、使った後のスポンジの汚れや洗剤を落とし、しっかりと水気を切ってください。また調理中に頻繁に触る水栓の取っ手も、調理が終わったら湯をかけておくと衛生的です」
(Hint-Pot編集部)