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お菓子やレトルトカレー、ドラマ化… 旅行ガイド「地球の歩き方」が書店を飛び出した理由

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・鍬田 美穂

ドラマ「地球の歩き方」にも出演した宮田崇編集長【写真提供:(C)ドラマ「地球の歩き方」製作委員会】
ドラマ「地球の歩き方」にも出演した宮田崇編集長【写真提供:(C)ドラマ「地球の歩き方」製作委員会】

 創刊以来、最大のピンチだったコロナ禍に「旅行ガイドの棚で勝負する」と決断し、V字回復を遂げた旅行ガイド「地球の歩き方」。昨今は数々のコラボ商品が発売されているほか、筋書きのない旅行ガイドが原案の異例の実写作品、ドラマ「地球の歩き方」が1月より放送されています。「Hint-Pot」編集部では、全3回のインタビューを実施。原点回帰した背景について聞いた前回に続き、なぜ「地球の歩き方」が積極的にコラボに取り組むのか、編集長の宮田崇さんにお話を伺いしました。

 ◇ ◇ ◇

コラボ企画に踏み出すヒントになったのは「江戸時代の伊勢参り」

 海外旅行のガイドブックで、圧倒的な知名度とブランド力がある「地球の歩き方」。起死回生の一手となった「旅行ガイドの棚で勝負する」という戦略のなか、大きなインパクトを与えたのが、「ムー」「ジョジョの奇妙な冒険」「宇宙兄弟」といったコラボ書籍でした。

 そうしたコラボ企画は書籍だけでなく、コンビニエンスストアや100円ショップ、食品メーカーなど、さまざまなコラボ商品が増えています。「旅行ガイドの棚」どころか書店すら飛び出し、実写ドラマ化というフィールドの違うメディアにも、そのブランドを広げる形に。こうしたコラボを積極的に展開する背景には、どういった考えがあるのでしょう。

 その問いに宮田さんは、「江戸時代の伊勢参り。具体的には伊勢講、伊勢暦に、ヒントを得ました」と切り出します。

 江戸時代に多くの庶民が“一生に一度は行きたい”と願った伊勢参り。そのために共同出資する講を組織し、参詣のための費用を積立て、輪番制で伊勢への旅を実現させていました。伊勢神宮への旅を手配する御師(おし)が、お札とともに配布したお土産として人気だったのが伊勢暦です。

「伊勢暦には、農作業の時期や年中行事などが記されていました。現代のカレンダーと同じく暮らしのなかにあって、人々はそれを見ることで伊勢参りが365日、日常にコミットしている形になるわけです。江戸時代の2週間や1か月の伊勢参りの旅を現代に置き換えると、海外旅行だと思います。

 年に1度、海外旅行をしても5日から長くて30日。『地球の歩き方』が人々の生活に関わるのは、それだけしかありません。そう考えると、“残り330日、日常に食い込める伸びしろがあるのでは?”と思ったんです」

 旅行ガイドの棚の中だけでは届かない日常にリーチするため、選んだ別の業態との積極的なコラボ展開。そこには「発信力」への反省もあるというのです。

「本の形以外にも情報発信に取り組まなければいけなかった」

ドラマのオファーがあるまで「地球の歩き方」を知らなかったキャストも【写真提供:(C)ドラマ「地球の歩き方」製作委員会】
ドラマのオファーがあるまで「地球の歩き方」を知らなかったキャストも【写真提供:(C)ドラマ「地球の歩き方」製作委員会】

 実は、取材中に宮田さんは何度も「我々の発信力のなさ、発信する努力の足りなさ」と口にしています。ドラマ「地球の歩き方」韓国編の主演である三吉彩花さんが、作品に関わることになって初めて、同書の存在を知ったエピソードだけでなく、真摯な口調で度々その言葉が出てきました。

「コロナ禍がなかったとしても、日本人の人口が減り、円安などの経済状況で海外旅行へのハードルは上がっていると思います。スマホの登場などで環境が変わるなか、我々はもっと真剣にSNSと向き合うなど、本の形以外にも情報発信に取り組まなければいけなかったんです。逆に、SNSや書籍以外の発信を強めれば、旅行の予定がない人や旅から離れている人の日常にも、『地球の歩き方』が入り込む余地ができる……。

 実は過去にも、コラボ企画を試みたことはあるのですが、当時はやり方がわからないまま正面からぶつかっていて、うまく形にできませんでした(笑)。今は学研のグループ会社になり、そういったことに長けた担当者がいるので、一緒に取り組んでもらいながらノウハウを蓄積しているところです」