Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

「酢を飲むと体がやわらかくなる」は本当? 意外と知らない栄養や調理に取り入れたい特徴とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

さまざまな作用が期待される酢(写真はイメージ)【写真:写真AC】
さまざまな作用が期待される酢(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 昔から「酢を飲むと体がやわらかくなる」といわれますが、実際はどうなのでしょうか? 寒さで体がこわばって硬さが気になるこの季節。言い伝えの“真相”や、酢の豆知識について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

たんぱく質を分解したり、骨をやわらかくしたりする酢の性質が由来?

 酢(食酢)は、米や麦などの穀類、リンゴやブドウなどの果実のでんぷんや糖を含む食材を原料にして、アルコール発酵させた後に酢酸発酵させた液体調味料をいいます。酢には数多くの成分が含まれていますが、そのなかで主成分は「酢酸」です。酢酸は酸味のもとになります。

 酢は塩と並ぶ人類最古の調味料で、日本に酢の醸造技術が伝わったのは4~5世紀頃。当時は高級調味料や漢方薬として、珍重されていたようです。庶民に広まったのは江戸時代で、ごはんに酢を混ぜて作る押し寿司やにぎり寿司が広まりました。

「酢を飲むと体がやわらかくなる」と言われるようになったのはいつからなのかは不明で、本当にやわらかくなるのかについても科学的な根拠はありません。しかし、その由来は、酢の性質が関係しているといった説があります。それは、カルシウムを溶かしたり、たんぱく質をやわらかくしたりする酸性の性質です。

 たとえば、小魚を酢に漬けてマリネにすると骨までやわらかくなり、酢を入れて肉を煮ると身がほろほろとやわらかく仕上がる特徴が。そのような酢の性質から「酢を飲むと体がやわらかくなる」といった迷信が生まれたと考えられています。

酢の健康メリット、調理でいかしたい性質とは

 酢をそのまま飲むのは、強い酸の影響で、食道や胃の粘膜を傷つけるので危険です。調味料として、煮物やスープの隠し味として使ったり、納豆やサラダにかけたりするなど、日々の調理に積極的に用いると良いでしょう。

 酢には、酸味が味覚や嗅覚を刺激し、唾液や胃酸の分泌を促して食欲を増進させる作用があります。また、酢の酸味には酢酸のほか、クエン酸などの有機酸が多く含まれていることから、糖分と一緒に摂取すると疲労回復に効果的です。

 酸味が苦手な場合は、食酢に乾燥したナツメやクコの実などを入れてみてはいかがでしょうか。ナツメやクコの実の甘味で酸味がやわらぎます。水や炭酸で薄めて飲むとさっぱりとおいしく、調味料としてもドリンクとしても活躍。とくに玄米を原料とする黒酢がおすすめです。

 このほか酢には、細菌の増殖を防ぐ防腐作用があり、食品の保存性を高める効果は昔から経験的に知られています。酢の物などの料理は、減塩にも役立つでしょう。また、近年の研究では、内臓脂肪を減らしたり、高血圧を抑制したり、血中脂質を低下させる作用も注目されています。

 調理では、アクが強いゴボウやレンコンなどの野菜のアク抜きや変色防止にも。また、里芋のぬめり取りや、ジャガイモやレンコンなどを茹でる際に酢を加えるとシャキシャキになり、食感を良くします。

 古くから伝わる調味料の酢。1日大さじ1程度を目安に、継続的に毎日の料理に活用したいですね。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾