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シングルファザーと長男の中学受験 難関校を突破した道のり 地方在住の苦労、「立役者」の存在
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近年、注目度が高まっている中学受験は合否発表が一段落し、春からの進学に備える時期に入ってきました。親子が紡ぐ各家庭ごとの受験ドラマがあります。経験談を聞くことで、気付きや学びを得ることができるでしょう。3児を育てる地方在住のあるシングルファザーは、小6の長男が、関西の名門中高一貫校の灘中学(兵庫)に合格を果たしました。シングルの子育てに加え、地方の住環境で苦労を重ねたそうです。難関校をクリアした“受験記”を伺いました。
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名門中高一貫校・灘中学に見事合格 小1の終わりに浜学園に入塾
お父さんは40歳で、地方の零細企業の経営者です。家族構成は、70代の母、小6の長男、小4の長女、年中の次女。「元妻、私共に都内の私文大学出身です。子どもたちは私立小学校と系列幼稚園です」と言います。お父さんは、シングルファザーの中学受験2026 2024(@jyuken2026_2024)のアカウント名で、X(ツイッター)を通して学習記録や受験情報の発信に取り組んでいます。
今回、大成功の合否結果が出ました。志望校は灘中学。全部で9校の合格を獲得したそうです。「進学先は地元最難関の特待合格をいただいたのでとても迷いましたが、本人が『より高いステージで学びたい』と希望し、灘中学に決めました。将来の夢は今のところないらしいです。6年かけて見つけてほしいと思っています」。自ら選択した進学先。息子さんにとって素晴らしい未来が見つかるといいですね。
中学受験を目指した理由はどういったものなのでしょうか。お父さんご自身の経験もその1つだそうで、「私自身が中高一貫校出身です。中高一貫のメリットとして時間の使い方の自由度が高いことが挙げられ、大きな利点であると感じていました。なので、私の母校でもある私立小学校からの系列中高への進学を考えていました」とのことです。
受験までの道のり、そして、勉強法が気になります。親族の進学の様子を目の当たりにする中で、早い段階から進学塾に通っていたそうです。
「おいたちが中学受験を経て地元最難関校へ進学したので、うちも頑張ればいけるかな? という軽い気持ちで、おいたちの通っていた浜学園という塾に小1の終わりに入塾しました。そこから、WEB受講で小3まで、小4から通塾しました」
本格的な受験勉強は4年生から始まりました。「基本的には算数を中心に勉強していました。塾の教材+市販教材(X等の口コミで良いと紹介されていたもの)で、息子の能力に見合った難易度のものを見繕って取り組みました」と教えてくれました。
息子さんの意欲と勤勉な姿勢が、大きな武器になりました。「今回うまくいった一番の要因は、息子の性格が素直だったこと、向上心が高かったことが大きいですが、私が貢献できたことで言えば、会話をたくさんしたことだと思います。息子には『今日のお父さんの演説はなかなかよかったよ』と言われていましたが(笑)」。親子の密なコミュニケーション、仲良しの関係性も原動力になったのですね。
「理不尽なことで叱ることはせず、常に『なぜ』という根拠を自分の中で明確にして伝えるようにはしてきました」
息子さんには「早く寝なさい」と睡眠時間をしっかり確保するよう言い聞かせるなど、できる限りのサポートに努めたそうです。親としての応援スタイルとは。
「父親としては、かなり厳しい教育だったと思います。やるべきこと、やりたいこと、やった方がいいこと、それぞれの優先順位を間違えず、限られたリソースの中で何ができるのかを常に話し合ってきたように思います。決めたことを怠惰やごまかしによってサボった時には、きつく叱ったこともありました。その中で大切にしていたことは、一貫性と根拠です。もちろん、臨機応変に方針を変えることはいとわないですが、大きな目標と信念はブレることなくやってこれたと思います」
叱るべき時は叱る、それでも理性と合理性はけっして忘れない。いい意味の厳格さがあります。お父さんは「理不尽なことで叱ることはせず、常に『なぜ』という根拠を自分の中で明確にして伝えるようにはしてきました」と話します。
シングルファザーの子育て環境、地方在住の住環境を乗り越えての合格。実際にどうだったのでしょうか。
「受験に関して言えば、シングルであるがゆえに夫婦間の教育方針のズレや非協力的なパートナーへのストレスがなく、大変だった中でも有利な面もあったと思います」と振り返ります。
「地方在住で苦労したことと言えば、塾が遠い、とにかく移動が多いことでした。本部校舎での特訓講座のために月に何度も新幹線移動や宿泊をして、体力、金銭面共にしんどかったです。しかし、息子が文句一つ言わずに黙々とこなしている姿を見て、頑張りがいがありました」。親子が同じ方向を向いていたからこそ、目標を達成できたのですね。
そして、最も助けてくれた大事な存在がいます。「息子の中学受験の一番の立役者は、母だと思います。私の母の協力なくしては不可能でした。弁当や家事、最後の長期遠征では息子と共に兵庫で3週間過ごして面倒を見てくれました。高齢の母に大変な負担をかけてしまいましたが、息子の大きな励みになったと思います。娘たちも息子の勉強の邪魔にならないよう、いろいろと我慢してくれていたと感じます」。家族の惜しみないサポートがあってこそですね。