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日本人元練習生が予想するK-POPの近未来は「破壊が起きてくる」 自分らしさを確実に持つ必要

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著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

高田健太の初書籍(c)KADOKAWA
高田健太の初書籍(c)KADOKAWA

 韓国の音楽専門チャンネルMnetで2017年に放送されたオーディション番組「PRODUCE 101 Season2」に唯一の日本人として出演し、現在は「KENTA・SANGGYUN」として日韓両国で活動している高田健太が初書籍「日本人が韓国に渡ってK-POPアイドルになった話。」(KADOKAWA刊、1650円税込み)を発売しました。K-POPアイドルになることを夢見て韓国に渡り、文化や言語、習慣の違いに戸惑いつつもチャレンジの日々を過ごした高田に、世界的な拡張を続けるK-POPの近未来を聞きました。3回連載の2回目。(取材・文=鄭孝俊)

 ◇ ◇ ◇

「PRODUCE 101 Season2」に出演後、JBJとしてデビュー

――近年、K-POPアイドルを目指して韓国へ渡る日本の若者が増えています。

「ぼくは『PRODUCE 101 Season2』に出演して11人で結成されたWanna Oneのデビューメンバーにはなれませんでしたが、その後、JBJとしてデビューすることができて報われました。まじめにひたすら練習に没頭しているぼくは絵柄として面白みがないですから番組には全然映りませんでしたが、一生懸命やってよかったと思っています。誰かが必ず見ていてくれている、と思っています。ただ、ぼくの場合は運もあります。必ずしも全員の夢がかなう甘い世界ではありませんので覚悟が必要です」

――韓国の芸能事務所には無償でトレーニングを受けさせてデビューを目指すインキュベーション(孵化)システムという独特の育成方法がありますね。

「アイドルを目指すなら若い一定の期間、練習に集中するというのは必要だと思っています。大手の事務所の場合、ダンスやボーカル、演技力、トーク力など技術的な部分のレッスンは充実していますが、精神的なヘルス、メンタルトレーニングのような部分はまだ足りていないように思います。本にも書きましたが、アイドルリテラシーの部分です。小学生や中学生という子どもたちにはまだ社会がしっかり理解できていません。だから、この道ではなかった時にどういう道があるのか、をしっかり伝えておくべきです。SNSとの距離感、ファンとの距離感、これをどうすべきか、社会がどうやって動いているのか、どういう問題があるのか、そこにどう向き合っていくべきなのか…。自分は何が嫌いで何が好きなのか、どういったものが得意で不得意なのか。練習生1人1人がまずは知るべきだと思うので、そこにもっと力を入れるべきではないか、と思います」

――幼いながらも相当な覚悟が求められるのですね。

「そうです。私利私欲な気持ちで夢に向かって行ったら必ず壊れます。自分のエンターテインメントが誰のためにあるのか、何に役立つのか、そういった他利他欲の精神が大切です。今すぐにそう生きろ、ということではなく、最終的にそういう人間、そういう生き方になれるように今、何をすべきかということを考えて夢に向かって頑張ってほしいです」

――ところで、K-POPアイドルの世界も多様化して韓国人がいないK-POPアイドルグループも続々と誕生しています。

「膨張を続ける『K-POP』はやがて『K』が落ちて大きなジャンルになり、個別のグループにファンが付くという流れになるのではないでしょうか。大きくなり過ぎた輪の中の細分化が始まるからこそ、『自分は誰なんだ?』という自分らしさや個性が大切になってきます。それがないと、泡が弾けるようにどんどん忘れ去られていくと思います。ですから、K-POPの近未来はいい意味での破壊が起きてくると予想します。破壊が起こる前に、アイドル1人1人、これからアーティストを目指す練習生たちは自分らしさをもっと確実に持つ必要があります」

――それでも全体的な印象としてはK-POPらしさを感じます

「『K』と『J』の違いは何かと聞かれたことがあります。ぼくは絵画にも取り組んでいるので議論したことがありますが、はやり韓国の土地から、そしてその土地のエネルギーから感じたものを表現するのがアートなわけです。韓国のソウルには漢江(ハンガン)が流れていて、四季折々の景色や情景があって、それを感じ取って作品を作ればKアートになります。それと一緒だと思います。K-POPも漢江があってソウルの南山タワーがあって、冷たい冬の寒さがあって…。そんな場所で楽曲やダンスが作られるからこそK-POPだと思うんですよ。日本にも素晴らしい風景や料理がたくさんありますが、それだと『J』にしかならない。理由はそこだと思います。韓国で作っていないからもちろんなるわけがないんですよ。それはクオリティーの問題ではなく、そういった感情のエネルギーとかパワーとかいうものです」

――韓国人が1人もいないグループでも最後の仕上げを韓国での合宿で行ったり、韓国語のトレーニングを受けたりしています。

「そういう人たちは、結果的にちゃんとK-POPになっていると思います。K-POPでもJ-POPでもない独自の路線をアピールするグループもありますが、韓国で合宿しスタッフも基本的に韓国人だと韓国っぽくならざるを得ないと思います」

※第3回に続く(文中、高田の「高」はハシゴ高です)

◇高田健太
1995年、群馬県生まれ。2017年に韓国で放送されたサバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 Season2」に唯一の日本人練習生として出演し話題を呼ぶ。番組終了後にファンの間でデビューを望む声が高まったメンバーが集結して6人組ボーイズグループ・JBJを結成しデビューを果たした。その後もグローバルな活躍を続け、現在は「KENTA・SANGGYUN」として活動中。同時にアート活動も精力的に行っており、2021年には個展「MADE in KENTA」を日韓で開催。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)