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「このくらい常識」は通用しない? 新入社員に教えるビジネス電話のマナー プロが解説

公開日:  /  更新日:

著者:樋田 かおり

新入社員にとってはなじみのない固定電話(写真はイメージ)【写真:写真AC】
新入社員にとってはなじみのない固定電話(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 この春、職場に新入社員を迎えた管理職の人もいるでしょう。コミュニケーションの中心はSNSで育った、Z世代である今時の新入社員。研修で教えるビジネスマナーのうち、苦手意識が高いのが「ビジネス電話」です。そこで、企業向けにビジネスマナー研修を行う株式会社トークナビ代表取締役でアナウンサーの樋田かおりさんが、上司世代が驚くZ世代の常識やマナーの教え方を紹介します。

 ◇ ◇ ◇

“ながら電話”のZ世代 かける前の姿勢と準備から

 最近、新入社員向けの電話研修で驚くのは、固定電話の受話器を利き手で持ってしまう人がいることです。有線式の固定電話の場合、利き手と反対側の手で受話器を持ち、利き手でメモを取るのが基本姿勢。Z世代は固定電話になじみがなく、触ったことがない人もいるのです。

 総務省の調査によると、固定電話の世帯保有率が低下。現在、40歳前後の人が新卒入社した頃は90%超えでしたが、近年では60%台まで下がっています。Z世代は固定電話のない家庭や、あっても防犯などの観点から「家の電話には出ない」というルールで暮らしていることが多いようです。

 そのため、上司世代は「そこから?」と感じるかもしれませんが、まずは電話機の使い方と姿勢から教えましょう。背筋を伸ばして椅子に座ること、電話をかけるときは事前に用件をまとめたメモを手元に置くことも教えます。“ながらスマホ”が日常で、メモはせず「あとで、SNSで送っておいて」と頼むZ世代は、電話をかける前の準備に気が回りにくいからです。

 研修で逆に新入社員から驚きの声が上がるのが、受話器の置き方のマナーです。ガチャンと置く「ガチャ切り」は印象が悪いため、本体のフックを手で押してから受話器を戻すことを説明すると、「へぇ!」「知らなかったです」と驚かれます。上司世代には当たり前の動作も、スマートフォンしか知らないZ世代には初めて見る光景なのです。

上司世代とZ世代の「常識」は違う 声のトーンは?

 あるとき、Z世代の若手社員が電話中、低い地声で話し「あ、はい」「あ、そうですか」などで、語尾のトーンを下げているのを聞きました。てっきり社内の人が相手だと思ったら、お客様相手の電話だったとわかり、驚いたことがあります。

 管理職世代にとって、ビジネスで電話をかけるときは声の印象に気をつけ、いつもより高い声にするのが「常識」と考える人も多いでしょう。しかし、Z世代にとって電話はSNSでつながっている友人との通話が中心であり、いつもの相手にいつもの声のトーンで話すのが「常識」なのです。

 新入社員には電話応対のマナーとして、第一声は明るく発声し、話すときはいつもより高いトーンを意識することを教えましょう。「高いってどのくらい?」と聞かれた場合、ドレミファソラシドの音階で言うと、「ソ」の高さで始めるのがおすすめと伝えています。日本語は「ソ」の高さから始まって「ド」の高さで終わると、抑揚ができて聞きやすくなるからです。

社外の人にも「お疲れ様です」と言ってしまう理由

 もうひとつ、先ほどのZ世代の電話で驚いたのが、お客様相手に「お疲れ様です」とあいさつしていたことです。Z世代はフラットな人間関係を好むといわれ、社内でも役職にかかわらず「さん付け」で呼ぶことに抵抗はありません。その延長線上、社外の人を「さん付け」で呼んだり、「お疲れ様です」と言ってしまったりすることがあります。

 ビジネスでは「社外の人」と「社内の人」を区別することが大事です。社外の人との電話では、基本的に相手は「様」を付けて呼ぶほか、「ただいま、山田は外出しております」のように、自社社員は呼び捨てにします。「お疲れ様です」と言うのは社内の人のみで、社外の人には「お世話になっております」とあいさつするよう教えましょう。

(樋田 かおり)

樋田 かおり(といだ・かおり)

岐阜県出身。日本テレビ系列RAB青森放送アナウンサーを経て、2015年に株式会社トークナビを設立。企業向けのプレゼン研修やマナー研修、広報代行事業などを実施。著書に「社長の伝え方には会社を変える力がある」(青春出版刊社)ほか。