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「海洋散骨は埋葬の選択肢のひとつ」 事業者が考える一番大事なこととは 墓じまいにも
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海洋散骨が近年増えている3つの要因
――そもそも貴社が海洋散骨を始めたのは、どのような経緯があったのでしょうか。
「海洋散骨は、弊社の創業者である村田ますみが18年前に始めたものです。会長の母親は沖縄の伊江島でダイビングを楽しむような方だったのですが、亡くなる前に『亡くなったら、海に散骨してほしい』と話されていたそうです。その後、会長の母親が亡くなったときに伊江島で散骨をしたのがきっかけでした。当時はまだ、海洋散骨はそれほど一般的ではなかったので、会長は『これを世の中に広めたい』と思い、弊社を立ち上げたのが我々の始まりです」
――始めた18年前からこれまでに、どのくらいの方が海洋散骨をされていますか?
「2023年秋時点で、約5000件ご利用いただいています。近年は増加傾向にあり、直近の1年間では約860件の利用がありました」
――なぜ、増えているのでしょうか。
「いろいろな観点があると思いますが、考えられる要因が3つあります。ひとつは、そもそもこの海洋散骨という埋葬の仕方を多くの方に知っていただけるようになった点です。そのうえで、二つ目はやはり『墓じまい』というのが広がりつつあるなかで、そのひとつの方法として検討される方が増えたのかなと感じています。そして三つ目が、多様性が認められるようになり、生涯独身で過ごされる方が増えてきました。そのため、後継者のいない人や、お墓を持っていない人が多くなっているのかなと考えています」
海洋散骨の現状 生前の話し合いも大事
――実際に海洋散骨を利用される方は、故人の意向が多いのでしょうか。
「そうですね、当社の場合の話になりますが、基本的にはご本人の意向がほとんどです。故人の遺志が約7割、故人が海好きなど好みに合うというのが約2割ですから、全体の9割に海洋散骨への思いがあったと我々はとらえています」
――散骨できる海域も増えているのでしょうか。
「現在、全国81か所で船が出航可能ですので、海に面するすべての都道府県で海洋散骨ができるようになっています。また、海外に関してはハワイで一部、可能です。日本人にとってハワイは結婚式を挙げるなど、特別な場所になっているようで、ハワイの海にも特別な感情を抱いている方が多いようです」
――海洋散骨したいと思ったら、どうしたらいいのでしょうか。
「可能であれば、生前に海洋散骨の体験をしていただきたいです。当社では毎月、東京や横浜で体験クルーズを行っているのですが、実際に船に乗ってみると、口コミやホームページを見るだけではわからないリアルな体験ができ、実際のイメージがつきやすくなります。たとえば、思った以上に船が揺れるので、どうやって遺骨をまいたらいいのだろうとか、お花はどうしようかとか……。もしご本人の参加が難しい場合は、ご家族の方でもいいと思います。実際に体験することでイメージが変わると思いますので、まずは体験クルーズに参加されることをおすすめしています」
――親や自分が亡くなったときのために考えることだと思いますが、やはり今のうちから十分に話し合っておく必要がありそうですね。
「そうですね。これまで、故人の埋葬先はお墓だけでした。ですが、現在は納骨堂や樹木葬など、埋葬の仕方が多様化しています。海洋散骨は、その選択肢のひとつです。ですから、自分に合った埋葬先を選んでいただきたいというのが、我々の考え方です。まずはどういう形で眠りにつきたいのか、そこが一番大事だと思いますので、生前のうちにご家族で話し合われる時間を持ってほしいと思っています」
2007年の創業以来、東京湾を中心に全国各地で海洋散骨のサポートを行う。ダイビング好きだった村田ますみ現会長の母親の「亡くなったら、海に散骨してほしい」という願いを実現したことがきっかけで、「世の中に広めたい」と海洋散骨「ブルーオーシャンセレモニー」を主軸の事業とする会社を設立。年々、海洋散骨の利用者は増え、昨年は1年間で約860件、スタートして17年で約5000件の利用があったという。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)