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二世帯住宅の悲劇 遺産相続で揉める理由とは 税理士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

不動産以外に財産がない場合は注意が必要

 このケースから学べることがいくつかあります。まずは、遺産分割争いは、父親の相続(最初の相続)よりも母親の相続(2度目の相続)のほうが揉めやすいということ(父親が先に亡くなった場合を想定しています)。

 父親の相続のときは、子どもたちも「母に老後資金や住むところを残してあげたい」という優しい気持ちがあります。そのため、最初の相続で遺産分割争いが起こる可能性は低いわけです。でも、母親の相続での相続人は子どもだけになります。これが親から財産をもらう最後のチャンスになりますから、遺産分割は難しくなるのです。

 もうひとつは、遺産が多くない人でも遺産争いは起こるということです。「遺産争いなんて金持ちだけの話」と思っている人は多いと思いますが、高田さんの家のように、たいした財産がなくても揉めることがあります。それどころか、たいした財産もないがゆえに揉め事が大きくなることもあるのです。

 少し考えてみてください。仮に3000万円の自宅以外に、多額の現預金があったとしましょう。

 高田さんが3000万円の自宅をもらい、弟さんたちがそれぞれ3000万円ずつの現預金をもらうことができれば、きょうだいが揉めることはなかったと思いませんか。つまり、不動産以外にたいした財産がないような人は、かえって注意が必要だということです。

 もうひとつは、子どもが2人以上いる場合、どちらかの子どもと二世帯住宅を建てる(同居する)ときには、高田さんのような問題が潜んでいるということ。二世帯住宅は、遺産分割争いを複雑化させる可能性が高いことも肝に銘じておきましょう。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。