Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

お金

どうしたらいいの? 親が認知症になって口座が凍結 弁護士が教える対処法とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

教えてくれた人:森崎 秀昭(弁護士法人C-ens法律事務所)

認知症で預金口座が凍結されたら…どうしたらいいの?

 このように預金口座が凍結されると、原則として、子どもでも家族でも、本人でさえもお金が下ろせなくなります。また、普通預金だけでなく、定期預金や信用金庫の口座など、すべての口座が凍結されると考えていいでしょう。

 例外的に下ろせるケースもあるのですが、それはとてもまれです。非常に難しい条件をクリアしなければならないため、基本的には家族であっても口座の預金を下ろすことはできないでしょう。

 つまり、これから認知症の親の介護にかかる資金を、親の銀行預金から捻出しようとしても、親が認知症になってしまったあとでは引き出せないということです。

 唯一の解決方法として、成年後見制度を活用する方法があります。これは、認知症になった親の財産を管理する人を裁判所に選んでもらう手続きです。これによって、口座の管理が可能になるだけでなく、介護施設との契約や不動産の処分なども行えるようになります。ただし、成年後見制度には意外な“落とし穴”もあります。

唯一の解決方法である成年後見制度のデメリットとは

 親が認知症になったあと、凍結された預金を管理するには成年後見制度を活用することで解決しますが、次のようなデメリットがあることを覚えておきましょう。

1. 家族が成年後見人になれるとは限らない
 裁判所が成年後見人を選ぶ制度のため、必ず家族が選ばれるわけではありません。家族が後見人に適していないと裁判所に判断された場合は、たとえば地元の弁護士などが選ばれることがあります。

2. 専門家が後見人になると毎月の報酬を払う必要がある
 仮に、家族ではなく弁護士などの専門家が後見人に選ばれた場合は、後見人に対して報酬を毎月支払う必要があります。相場は月数万円ですが、年間にすると数十万。認知症の親が亡くなるまで支払い続ける必要があるため、出費は意外にも大きくなります。

3. 手続きに時間と労力がかかる
 裁判所が選出する制度であるため、手続きが少し難しく、必要書類を集める手間や時間がかかります。さらに書類を提出したあとも、後見人が決まるまでに時間がかかるため、スピーディに解決するのは困難です。

4. 親族の思うように財産を使えるわけではない
 後見人の仕事は、認知症になった親の財産を守ることです。そのため、家族であっても好きに親の財産を使うことはできません。たとえ親のために介護サービスや自宅のリフォームが必要だと家族が考えたとしても、後見人が不要だと判断すれば、親の財産を使うことはできないのです。

5. 財産の運用処分が困難になる
 成年後見制度は、認知症になった親の財産を守ることが目的です。そのため、財産を使って資産運用することはできません。また、不動産の処分も、裁判所の許可が必要になります。そのため、親の財産は介護施設への入居や介護費用など、後見人が許可を出したもののためにただ消費されるだけになってしまいます。

 このように、成年後見制度は一見、認知症になった親の預金が凍結されたときに活用できる便利な制度のようですが、手続きに時間がかかる、費用がかかる、思うように財産を使えるわけではないなど、意外に知らないデメリットが多いことも事実です。

 成年後見制度を活用したくない人もいるでしょう。次回の後編では、そんな人向けに、親が認知症になる前の対策としてできることについてご説明します。

◇森崎秀昭(もりさき・ひであき)
2005年3月に立教大学法学部法学科を卒業後、2007年10月に司法試験に合格。都内企業法務系法律事務所で弁護士としての経験を積み、2014年3月に独立、C-ens法律事務所を設立した。代表弁護士として、相談者の悩みに寄り添いつつ、2010年からはスポーツ界のガバナンスに関する委員会委員、公益財団法人日本バスケットボール協会評議員、一般社団法人日本アスリート会議監事など、スポーツ界の法務にも携わっている。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)

森崎 秀昭(もりさき・ひであき/弁護士法人C-ens法律事務所)

2005年3月に立教大学法学部法学科を卒業後、2007年10月に司法試験に合格。都内企業法務系法律事務所で弁護士としての経験を積み、2014年3月に独立、C-ens法律事務所を設立した。代表弁護士として、相談者の悩みに寄り添いつつ、2010年からはスポーツ界のガバナンスに関する委員会委員、公益財団法人日本バスケットボール協会評議員、一般社団法人日本アスリート会議監事など、スポーツ界の法務にも携わっている。