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「雷が鳴ったらおへそを隠せ」というのはなぜ? 雷にまつわる言い伝え
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夏は、晴れていたと思ったら天気が急変し、突然の雷雨に見舞われる日があります。雷が鳴ると、子どもの頃に「おへそを隠せ」とか「雷様におへそを取られる」などと、大人たちから言われた経験がある人もいるでしょう。なぜ、おへそを隠す必要があるのでしょうか? 日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、雷にまつわる言い伝えを紹介します。
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子どもたちを守るための知恵だった?
子どもの頃、雷が鳴ると「おへそを隠さないと雷様におへそを取られてしまう」と、お腹を手で押さえたり、シャツを入れたりしておへそを見えないようにした人もいるでしょう。しかし、実際には雷が鳴ったからといって、おへそがなくなることはありません。なぜ、そういわれるのでしょうか。
諸説ありますが、有力なのは「子どもがお腹を冷やさないようにするため」とする説です。とくに夏場は雷を起こす積乱雲が発生しやすく、冷たい風とともに雨を降らせます。気象学や天気予報などが発達していなかった時代、昔の人々は、雷雨がもたらす急激な気温低下を経験則として知っていたのでしょう。
暑いからといって、子どもたちが無防備にお腹を出したままでいると、雷雨で気温が下がったときにお腹が冷えてしまい体調不良になることも。そこで「雷様におへそを取られる」と伝えることで、子どもたちが自発的にお腹をかばって冷えないようにしたといわれています。
また、おへそを隠すのは「低い姿勢を取らせるため」という説もあります。雷は周囲よりも高いところに落ちやすいため、おへそを押さえて前に屈む姿勢になることで、少しでも落雷のリスクが低くなるかもしれないと考えられたのが理由のようです。
「雷が鳴ったらおへそを隠す」との言い伝えには、ほかにもさまざまな説があります。明確な理由は定かではありませんが、上記の説からみれば、子どもたちを守るための知恵だったともいえるでしょう。
雷は神様が鳴らす「神鳴り」と考えられていた
現代では、雷の正体は電気で、積乱雲内に発生する強力な放電現象だとわかっていますが、「かみなり」の語源は「神鳴り」で、昔は雷は神様が鳴らすものと信じられていました。雷神の姿が鼓と一緒に描かれることが多いのは、雷の音が太鼓を鳴らす音に似ているためのようです。
ちなみに、ピカッと光る「稲妻」には、雷の光が稲にとって大切な存在という意味があります。雷は稲が実る夏の終盤に多くなるため、昔は雷の光は稲を実らせてくれるものと信じられていました。
そんな稲と雷の光との関係から、男女問わず大切な相手を呼ぶときに使われた言葉「つま」を用いて「いなづま」に。漢字の「妻」を当てて「稲妻」と表記するようになったといわれています。
雷が近づいてきたら速やかに避難を
数十年前までは、夏の午後の急な雷雨を「夕立」と呼ぶことが多く、さっと降ったあとは涼しくなるため「天からの打ち水」と表現されることもありました。しかし近年は、温暖化の影響で気候が極端です。夏は晴れれば猛烈に暑く、雷雨になると突風も伴って激しい。いわゆるゲリラ雷雨で、打ち水どころか洪水などの災害をもたらす可能性があります。
晴天から一転、空が暗く風はひんやり、遠くでゴロゴロという音が聞こえたら、積乱雲が近づき雷雨になるサインです。もちろんお腹を冷やさないようにするのは大切ですが、速やかに頑丈な建物の中へ避難しましょう。
気象庁では、鉄筋コンクリートの建築、オープンカー以外の自動車やバス、列車内などの空間を比較的安全な空間としています。木造建築の内部も基本的には安全としていますが、すべての電気器具、天井や窓、壁から1メートル以上は離れることを推奨しています。身を守ることを第一に行動したいですね。
(鶴丸 和子)