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赤いのになぜ「金」魚? 日本で親しまれるようになった理由とは 意外に知らない金魚にまつわる豆知識
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教えてくれた人:鶴丸 和子
日本の夏の風物詩のひとつである金魚。金色ではなく赤のイメージがありますが、なぜ「金魚」と呼ばれるのでしょうか。また、日本にはいつ伝わり、広く親しまれるようになったきっかけとはなんだったのか。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、知っているようで知らない、金魚にまつわる豆知識をお届けします。
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江戸時代の金魚ブームは武士たちの副業がきっかけ?
金魚は、中国から伝わった魚です。日本に初めてやってきたのは、室町時代の頃とみられています。あまりに希少で高価だったため、貴族や豪商といった一部の富裕層の間で観賞用として飼われていたそうです。当時は金魚を「こがねうを」と呼んでいたとする説もあります。
金魚が一般庶民に広まり始めたのは、江戸時代の中期以降。武士たちが副業として金魚養殖を始めたことで大量に出回るようになり、手に入りやすくなったといわれています。のちに金魚の行商や夏祭りの金魚すくいなども始まり、飼育が流行。買った金魚は、小さなガラスの器「金魚玉」に入れて家に持ち帰ったそうです。
当時はガラス製の水槽が普及していなかったため、金魚は陶器や木桶に入れて飼育するのが一般的でした。したがって、泳いでいる姿を横からではなく、上から見る「上見(うわみ)」が観賞の基本スタイルだったとか。金魚の美しい色彩と優雅な泳ぎに人々は魅了され、夏の涼を象徴する観賞魚として大ブームになりました。
金魚の名の由来には諸説あり
金魚の誕生は謎が多く、諸説ありますが、そのルーツは今からおよそ1700年前の中国。野生のフナが突然変異したヒブナとするのが定説です。その後、宮廷で飼われるようになり「チンユイ(金魚)」と呼ばれ、観賞用として改良が繰り返されてきたとされています。
金魚というと赤色のイメージがありますが、生まれたばかりの金魚はほとんどが黒っぽい色をしており、成長とともにそれぞれの色に変わっていくそうです。また、水質やエサの種類によっても色は変わるといわれています。
なぜ金色ではないのに「金」魚というのか、名の由来についても諸説あります。「昔は今のような赤色ではなく、黄みを帯びた色だったから」や「ウロコが光に反射して金色に見えたから」、または「金のように高価な魚だったから」などさまざまな理由が挙げられていますが、定かではありません。
金魚は金運アップや無病息災の縁起物
ちなみに、中国では金魚の「チンユイ」という発音が、お金に余裕がある「金余」と同じであることから、金魚は蓄財につながる金運アップの縁起物とされています。日本では赤い金魚に魔除けの力があると考えられ、無病息災の縁起物に。今でも浴衣や扇子、風鈴といった夏のアイテムで、金魚の絵柄が描かれたものは人気です。
もし、金魚を観賞する機会があれば、ゆったりと泳ぐ姿に涼を感じてみるのも良いでしょう。古き日本の夏の風情に思いを馳せ、心を癒やしてみてはいかがでしょうか。
【参考】
「金魚と日本人」鈴木克美(講談社学術文庫)
「金魚のすべて(増補改訂版)」川田洋之助、杉野裕志(エムピージェー刊)
「江戸創業金魚卸問屋の金魚のはなし」吉田智子(洋泉社刊)
鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
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