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夏に怖い話が風物詩になった驚きの理由 背筋がゾッとしたり、鳥肌が立ったりするのはなぜ?
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夏になると、なぜ日本では怪談や怖い話が盛んになるのでしょうか。恐怖で暑さを忘れるためといわれていますが、夏に怪談や怖い話をするようになった背景は別にあるようです。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は、怪談が夏の風物詩となったルーツに迫ります。
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「夏に怪談」は、江戸時代のお盆の芝居が関係
「夏といえば怪談」のルーツは、芝居とお盆に関係があるようです。江戸時代、庶民に人気の娯楽といえば芝居でした。上演する芝居小屋はたいていが満席でしたが、夏場のお客さんの入りはいまひとつだったそうです。現代のように空調や冷房設備などがなかったため小屋内は暑く、しかも主役クラスの役者たちの休暇と重なることもあり、お客さんが集まらなかったといいます。
そこで、夏にひと味違う芝居として若手の役者たちが挑戦したのが、幽霊が出るおそろしい演目でした。「四谷怪談」「皿屋敷」「牡丹燈籠」などの三大怪談が大流行。暑さも忘れるほどの奇抜な演出で、夏芝居として定着していったことが現代の「夏といえば怪談」の原点になったと考えられています。
また、夏芝居は盆狂言とも呼ばれます。お盆は、あの世から亡くなった人の霊が帰ってくる時期。地域によって違いはありますが、盆棚を作ったり、迎え火を焚いたりして、各家庭で祖先の霊を迎えるのが習わしです。
しかし、霊のなかには無縁仏や恨みを抱いた怨霊もいます。お盆の時期に、霊の無念や苦しみを役者が演じて語る夏芝居は、そうした浮かばれない霊魂を供養する意味もあったそうです。
怪談の「うらめしや」や「丑三つ時」とは
昔ながらの日本の怪談では、「うらめしや」が幽霊が現れるときの決まり文句ですが、これは「恨めしい」の意味です。浮かばれない幽霊の気持ちが込められています。
また、幽霊が現れる時刻を「草木も眠る丑(うし)三つ時」といいますが、現在の時間にすると午前2時~2時半です。この丑三つ時を方位に当てはめると、鬼門とされた丑寅の方角にあたるため、邪悪なものが出入りする門が開く時刻と考えられました。
そのため、丑三つ時になると幽霊が現れると信じられるようになったそうです。
怖い話を聞くと寒気を感じるのはストレスが原因?
人は怪談や怖い話を聞くと、背筋がゾッとして寒気を感じたり、鳥肌が立ったりすることがありますが、これは幽霊が背後を通ったわけではありません。現代では、不安や恐怖を強く感じたストレスによるものと考えられています。
ストレスで交感神経が活発になり、心拍数が上がってドキドキする一方で、緊張状態により毛穴や皮膚表層の血管が収縮。このため鳥肌が立ったり、血流が悪くなって冷えを感じたりするといわれています。
今も怪談が夏の風物詩として続くのは、単に恐怖で暑さを忘れることだけでなく、日本の伝統や価値観が根底に受け継がれているからでしょう。そんな視点から、苦手でなければ暑い夏の夜に怪談を楽しんでみるのも、また趣があるかもしれません。
(鶴丸 和子)
鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
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