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夏バテ防止にタコが良い理由 意外に知られていない栄養とは

公開日:  /  更新日:

著者・教えてくれた人:和漢 歩実

著者:Hint-Pot編集部

日本人になじみがある魚介のひとつ、タコ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
日本人になじみがある魚介のひとつ、タコ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 寿司ネタや刺身、たこ焼きなど、日本人になじみがあるタコ。タコといってもさまざまな種類がありますが、夏が旬のマダコは身がぷりぷりと締まっていて、歯ごたえと旨味が絶妙です。定番すぎてあまり意識しないかもしれませんが、タコは低カロリーながら栄養価が高い食品。厳しい暑さが続き、体がバテぎみのこの時期に、摂取しておきたい栄養成分が含まれているのだとか。意外に知らないタコの栄養について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

暑い時期に食べたい! タコの代表的な栄養素とは

 タコは世界に約200種類いるといわれていますが、食用とされているのはごく一部です。日本では古くからマダコやイイダコ、ミズダコなどを食用にしていますが、海外では「デビル・フィッシュ」と呼ばれ、タコを食べない国のほうが多いです。

 夏に旬を迎え、おいしさが増すのはマダコです。日本食品標準成分表2020年(八訂)によると、100グラムあたりのエネルギーは、生が70キロカロリー、ゆでたものが91キロカロリーと低エネルギーです。そのうえ、カリウムやナトリウムなどのミネラル、良質なたんぱく質が豊富に含まれています。

 厳しい暑さが続くこの時期、タコが良いとされるのは、主に次のような栄養メリットが理由に考えられます。

○タウリン
 カキやシジミなどの貝類に多く含まれることで知られていますが、タコにも豊富にあるアミノ酸のひとつです。老廃物の除去を助ける働きによって、肉体疲労や眼精疲労の回復が期待され、栄養ドリンクや目薬などの成分として知られています。

 また、肝機能を高める効果や、血液中のコレステロールや中性脂肪を抑える働きも認められています。暑さで消耗した体力の回復はもちろん、お酒のおともにも良いでしょう。タコはゆでた状態で流通することが多いですが、タウリンは水溶性なので、栄養メリットを考えれば生のほうが良いといえます。

○ビタミンB2
 ビタミンB2が豊富な食品というと、ウナギやレバーが知られていますが、タコにも多く含まれています。たんぱく質や脂質、炭水化物などすべての代謝に関わり、とくに脂質のエネルギー代謝には欠かせません。

 また、皮膚や粘膜の健康を維持する働きもします。疲れやすくバテやすい夏には、積極的に取り入れたい栄養素のひとつです。タウリンと同じように水に溶ける性質なので、生で食べるほうがより摂取できます。

○ビタミンE
 抗酸化力がとくに強いことで知られている栄養素です。細胞を活性酸素の害から守る「若返りのビタミン」ともいわれ、体をストレスから守る働きや老化を抑える効果があります。毛細血管を広げて血行を改善し、夏に起こりやすい動脈硬化を予防するなどの効果が期待できます。

○亜鉛
 古い細胞を分解し、新しい細胞を合成する新陳代謝に関わる、体作りには欠かせない栄養素のひとつです。汗の中に多く含まれているため、発汗に伴い体外へ排出されます。そのため、亜鉛が不足すると肌荒れや免疫機能の低下、味覚障害、貧血などが起こる可能性も。発汗量が多い夏は意識して摂取しましょう。

タコは食べすぎNG? 適量の目安とは

 このように低カロリー、高たんぱく質で、体をサポートする栄養素も豊富なタコですが、一方で注意してほしい成分も含みます。

 それはプリン体です。摂取しすぎると尿酸値が高くなり、痛風の原因になります。また、腎臓の疾患や尿路結石を誘発する可能性も指摘されているので、適量を食べるよう心がけましょう。

 プリン体は、100グラムあたり300ミリグラム以上含む食品は注意が必要といわれています。タコの含有量は100グラムあたり137.3ミリグラムで中程度ですが、つい連日食べすぎてしまうと体調不良につながります。食べる量は、1日100グラム程度を目安に。上手においしく取り入れて、賢く栄養を摂取していきましょう。

(和漢 歩実)

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾