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カイワレ大根が育つと大根になるのは本当? 栄養面の違いや長持ちさせる保存法を聞いた
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著者・教えてくれた人:和漢 歩実
すっきりとした辛味が特徴のカイワレ大根。天候による価格高騰もあまりなく、比較的安定した価格で手に入りやすいところも魅力です。面倒な下処理なしで、さまざまな料理にトッピングできて便利。そんなカイワレ大根は「大根の新芽」といわれますが、実際に育てたら大根になるのでしょうか。また栄養面での違いとは? 9月18日は「かいわれ大根の日」。記念日にちなみ、カイワレ大根について栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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大根の新芽であるカイワレ大根
カイワレ大根は、もともと日本では、寿司店や料亭など限られたお店で彩りや添え物などに使われる高級食材でした。1960年代から1970年代にかけて、栽培方法の進歩で量産できるようになり、一般家庭に広く普及したといわれています。
大根の新芽で、スプラウトと呼ばれる発芽野菜の一種。スプラウトといえば、近年、ブロッコリーの新芽のブロッコリースプラウト、エンドウ豆が発芽した豆苗などで知られていますが、カイワレ大根は日本のスプラウトの先駆けといえるでしょう。
カイワレ大根を、土に入れて育てれば大根になるといわれることがあります。可能性としてはゼロではないですが、大根のようにはなりません。多くのカイワレ大根は品種改良されており、育てても大根のように根が太くならないからです。
「カイワレ」という名は、双葉が貝の殻が割れたように見えることに由来しています。見た目がひょろっとしているため、栄養がないイメージがあるかもしれません。しかし、健康維持に効果的な栄養素が凝縮されています。
カイワレ大根は大根より栄養豊富?
カイワレ大根は、可食部100グラム中21キロカロリーと低カロリーですが、たくさんの栄養成分が含まれています。ビタミンでいえば、代表的なのはβカロテン。意外かもしれませんが、カイワレ大根は緑黄色野菜のひとつです。βカロテンは必要時にビタミンAに変わり、皮膚や粘膜を強化し免疫機能を高めることが期待されています。ちなみに大根の根の部分には、βカロテンは含まれていません。
同様に、カイワレ大根にはカルシウムを骨に吸着させて骨の形成を助けるビタミンKがありますが、大根にはほとんどありません。抗酸化作用があり、コラーゲンの生成に欠かせないビタミンCは大根の約4倍、造血のビタミンといわれる葉酸も2.8倍多く含んでいます。
ミネラルで比較すると、カルシウムは大根の2.2倍、マグネシウムは3.3倍です。しかしカリウムについては、大根の半分以下になります。
また、強力な抗酸化作用でがん予防として注目される、辛味成分のイソチオシアネートや、胃腸の働きを助けるジアスターゼやオキシダーゼなど、大根と同じ成分がカイワレ大根にも含まれています。
カイワレ大根の保存方法
新芽なので、日持ちしそうなカイワレ大根ですが、買ってきたままの状態で冷蔵庫に保存していると、2日ほどで弱ってしまうので注意しましょう。原因は乾燥です。いかに乾燥させないよう保存するのが、長持ちさせるポイントになります。
パックで購入してきたら、すぐにフィルムをはがして、水を根元が浸るくらい注ぎ、ラップをかけて野菜室に立てて保存します。水は1日に1度は取り替えましょう。このひと手間で、新鮮さをキープできます。使う際は、必要な分だけ根元から切り取りましょう。キッチンバサミを使うと便利です。
また、カットして保存する方法も。パックから出したカイワレ大根を水洗し、根元を切り落とします。それを湿らせたキッチンペーパーに包んで、密封できる保存容器か保存袋に入れて、野菜室で保存しましょう。
根元を切り落としたものを冷凍保存できますが、シャキシャキ感がなくなってしまうのであまりおすすしません。スープなどの彩りとして使う場合は、冷凍しても良いでしょう。
(和漢 歩実)
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾