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「お墓参りにひとりで行ってはいけない」 お彼岸にまつわるタブー その理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

お彼岸のお墓参り(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
お彼岸のお墓参り(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 秋のお彼岸は、秋分の日を中日として前後3日間。2024年のお彼岸は9月19日(木)~25日(水)で、お墓参りに行く人も多いでしょう。「ひとりでお墓参りに行ってはいけない」といわれることがありますが、なぜなのでしょうか。宗派や地域によって違いはありますが、お彼岸にやってはいけないこととは? 日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は秋のお彼岸やお墓参りについてです。

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お彼岸とは お盆と何が違う?

 日本では、秋と春のお彼岸の時期にお墓参りをする風習があります。そもそも彼岸とは、仏様や先祖がいる極楽浄土の「あの世」のこと。昼と夜の長さがほぼ同じになる秋分や春分の日の頃は、私たちが生きている「この世(此岸)」と近づくと考えられています。あの世との距離が近づくこの時期に、お墓参りで先祖を供養し感謝を伝え、自分自身も極楽浄土へ近づくために精進する、日本独自の風習です。

 同じく、お墓参りなどをして先祖を供養する日本の風習といえば、お盆があります。お彼岸と違うのは、お盆は先祖があの世から家に帰ってくる時期。迎えてもてなし、供養してあの世へ送ります。お彼岸は先祖がいるあの世と近づく時期なので、こちらからお墓に出向いて供養するのです。

 お彼岸には、おはぎやぼたもちを食べるのが一般的です。古くから餅は五穀豊穣に、小豆は魔除けに通じると考えられていました。区別しない地域もありますが、季節の花にちなみ、秋のお彼岸はハギのおはぎ、春はボタンのぼたもちと呼び、小豆をつぶしたり、こしたりするなど作り方を変えるところもあります。

お彼岸のタブーとは

 お彼岸にやってはいけないことについて、とくに決まりはありませんが、地域や人によっては、お彼岸に避ける傾向の行事があります。たとえば、お宮参りや結婚式といった祝い事、お見舞いなどです。とくにお見舞いは、相手にお墓参りを連想させて縁起が悪いといわれることがあるため、気になる場合は避けたほうが良いでしょう。

 また、秋のお彼岸の頃は、真っ赤な色が美しいヒガンバナが咲いているのを見かけることがあります。美しい花ですが、「ヒガンバナを持ち帰ると火事になる」との言い伝えを聞いたことがある人もいるでしょう。これは、ヒガンバナの球根に毒があるため、火事という不幸な出来事とつなげて注意喚起として広まったといわれています。もし誤って子どもが口にすると、下痢や嘔吐、呼吸不全などを起こす可能性があり危険です。ヒガンバナを見かけても触らないようにしましょう。

「ひとりでお墓参り」がNGといわれる理由

 同様に、注意喚起のひとつとしていわれるのが、「お墓参りにひとりで行ってはいけない」です。もちろん、ひとりでお墓参りに行ってもマナー違反ではありません。

 昔は墓地が山奥などにあり、行き来する道のりが険しかったため、墓参りにひとりで行くことは避けたほうが良いといわれました。電話などの通信環境が整っていなかった時代。道中、転倒してけがをしてしまったり、野生動物に遭遇したりした場合、ひとりだと助けを呼びにくく危険だからです。

 現代では、熱中症リスクの観点から「お墓参りにひとりで行ってはいけない」といわれることがあります。秋のお彼岸といっても、墓石の照り返しが強い季節。近年は天気の急変で突然、足元や視界が悪くなることもあります。お彼岸の時期は墓地へお参りに来る人が多いので、比較的人目につきやすいといえますが、注意してお墓参りに行きたいですね。

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu