からだ・美容
「精子は熱に弱いから」行為後は入浴しないほうがいい? 妊活の疑問や誤解を認定看護師に聞いた
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:小松原 千暁
妊活とは、妊娠を望むカップルが妊娠に向けて行うさまざまな活動のこと。明確な定義はありませんが、排卵日を自分で予測して性交渉をする「自己タイミング」から始めるのが一般的です。妊活中にふと疑問に思うことがあっても、専門家に聞く機会がなく、そのままにしていることもあるかもしれません。たとえばセックスのあと、逆立ちや腰上げをしたほうが妊娠しやすいといわれますが、実際はどうなのでしょうか? 妊活の正しい知識を広める活動をしている不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんに、妊活にまつわる素朴な疑問や誤解について伺いました。
◇ ◇ ◇
性交後の逆立ち、腰上げ、うつ伏せで妊娠の確率は上がる?
看護師として約20年間、生殖医療の現場に携わってきました。現在も日々、妊活中のさまざまなカップルと接していますが、不妊治療そのものだけではなく、意外にも日常で誤解している情報があることを知りました。そのひとつが、妊娠しやすくするために、女性が性交後に取ったほうが良いとされる行動や姿勢です。
結論からいえば、性交時の体位も含めて、性交後の姿勢によって妊娠率が上昇することはありません。たとえば、性交後に女性が逆立ちをしたり、腰上げしたりすると妊娠の確率を高めるといった情報があります。しかし、根拠となるデータはなく、そのようにする必要はありません。
精子が子宮にたどり着くのを助けるイメージからいわれるものだと思いますが、元気が良い精子は、ちゃんとたどり着きます。もちろん、その体位や姿勢が落ち着くなど心地良いと感じるのであれば良いですが、妊娠への効果という点では不明です。基本的にカップルの好きな体位で行うことを優先すると満足度が上がり、ホルモンの流れも良くなります。性交後は、パートナーとの関係を大事に、リラックスして過ごしてください。
性交後にお風呂は入らないほうがいい?
性交のあと、腟から精液が流れ出るような感覚があるかもしれませんが、すべてが出ているわけではありません。そもそも精液の大部分は精子以外の分泌物で構成されており、排卵期に増えたおりものと混じることで、性交後に一部が膣外に漏れ出ることもあります。元気な精子は射精後、速やかに子宮内に進入するので心配はいりません。
精子が膣外に出ないように、性交後はお風呂に入らないほうが良いと思っている人もいるかもしれません。ただし、こちらも同様に元気な精子は速やかに子宮内にたどり着くので、気にしなくて良いでしょう。外性器は、お湯かデリケートゾーン用の洗浄液で優しく洗ってください。
「精子は熱に弱いから」と性交後の入浴を避けているケースがありますが、誤解です。精子が熱に弱いとされるのは、精子が産生される環境が高温状態にあるのは好ましくないということです。いつも通りに入浴してかまいません。
正しい知識を持って、カップルで妊活ライフを楽しんでください。
(Hint-Pot編集部)
小松原 千暁(こまつばら・ちあき)
不妊症看護認定看護師、生殖医療コーディネーター、妊活支援ナース育成コーチ、日本生殖看護学会理事。不妊治療の専門クリニックに約20年間勤務した経験より、日本の性教育に妊娠する力の妊孕性(にんようせい)に関する情報が少ないことを実感。現在は生殖医療の看護師を指導する一方で、不妊治療を受ける患者さんや若い世代に向けて、自ら選択できるように妊活の正しい知識を広める活動を行う。妊活についての情報サイト「妊活の歩み方」でお役立ち情報を発信中。